トレーナー活動に活きる理学療法士の視点
痛みの原因はどこにある?
野球の投手がある程度決まったフォームで球を投げるのに対して、バドミントンの選手は飛んでくるシャトルの位置に合わせて動き、そこからシャトルを打ち返します。「腕を上から振り下ろす」という動作は同じでも、常に自分の力が入りやすいフォームで打てるとは限りません。後ろに飛んできたシャトルを打つために身体を大きく反り返らせたり、逆に前方にぐっと踏み込んだりすると、腕や肩だけでなく腰や足にも負担がかかります。「腰が痛い」と言う選手に対して、トレーナーを任された理学療法士は、その痛みがなぜ起こるのかを考え、根本的な原因を探していきます。
選手を観察し、声を引き出す
痛みの原因を突き止めるためには、プレー中の選手の動きをよく観察し、選手の声を多く引き出すことが重要です。選手に「調子はどう?」と聞いても、トップアスリートと中学生では返ってくる言葉が異なります。自分の身体性を理解するトップアスリートが具体的な状態を述べるのに対して、中学生の多くは「大丈夫です」と答えます。選手から具体的な内容を引き出すためには、選手との信頼関係やコミュニケーションが欠かせません。痛みの原因となる身体にかかるストレスと、痛みのある組織をある程度絞り込んでから理学療法の医療的アプローチが始まるため、選手の痛みを再現させることが必須となります。痛みの原因を絞り込むための観察や問診は非常に重要です。
選手に寄り添う理学療法士
腰の痛みの原因が、「選手の動きが遅いので、体に負担がかかる打ち方になる」だとすると、痛みを取り除いたあとの対策は「腰の筋力や柔軟性よりも、フットワークを鍛える」かもしれません。それを選手や監督者に説明して実践してもらうことで、選手の怪我を防ぐだけでなく、パフォーマンスの向上に寄与することもできます。身体の動きを観察・分析する方法を学んだ理学療法士がトレーナーとして活動するときの強みです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 福岡医療技術学部 理学療法学科 講師 柏木 正勝 先生
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