木を木材に換えるには、まず「道づくり」!

日本の山に木は豊富だが
戦後、林業政策で「拡大造林」としてスギ・ヒノキの一斉植林をした結果、同じ時期に伐採適期となる人工林が全国に広がる状況となりました。しかし、数十年にわたる木材価格の低迷や搬出コストの大きさから、せっかく植え育てた木材を切ってお金に換えることができない森がたくさんあります。伐りごろの木をすべて切る「皆伐(かいばつ)」を行う場合、ビジネス的にも環境のためにも、切った後に造林をしなければなりませんが、収益性の低さなどから、再び木を植える割合は3割から4割にとどまっています。つまり、山のサイクルがうまく回っていないのです。
林業に欠かせない「道」
木は、切って運び出すことで初めて商品になります。さまざまな林業機械が活用されていますが、これらの機械を現場の森へ運んだり、切った木を貯木場まで運び出したりするために必須なのが、「作業道」や「林道」と呼ばれる道です。林業を行うにはまず道を整備することが欠かせません。
最近では、崩れにくく安全な道をつくるために、3D測量で山の形を詳しく調べたり、コンピュータで最適なルートを計算したりする技術が使われています。林業は森の知識だけでなく、土木工学やIT技術なども活用する、とても幅広い分野の知見が必要とされています。
持続的な林業のサイクルを促す
森林の保育期間に行う間伐時も作業道は設置されます。しかし、皆伐して搬出する際には、よりしっかりした幅の広い作業道が必要です。良い作業道なら、自然災害にも強く、造林や保育するコストも下がります。作業道の設計・提案は、人工林が持続的なサイクルに入るための支援となるものです。
日本は国土に対する森林の割合(森林率)が先進国でも有数の「森の国」であり、豊富な森林資源を持続的な林業に置き換えていくには、いかに安全に、効率よく山を回していけるかにかかっています。
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先生情報 / 大学情報

岩手大学農学部 地域環境科学科 森林科学コース 教授齋藤 仁志 先生
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