文学を読み解く力を身につけて、共感力を養う
現代の問題に向きあうために過去のことばを学ぶ
現代の問題を考えるために、過去から学ぶこと、過去から勇気をもらうこともたくさんあります。いまも不平等や差別はたくさん残っています。争いも絶えません。19世紀のアメリカでは、女性たちが男性と平等の権利を求めて声をあげました。その時代に「固体が液体になるように、男性らしさや女性らしさは流動的である」と述べたマーガレット・フラー(1810~1850)は、アメリカフェミニズムのパイオニアで、その考えはいまも急進的です。先人たちの残したことばを学ぶことで、平等な社会を実現するためのヒントを得ることもできるのです。
アニメーションも漫画も歌詞も文学
読み解く物語は、文字で表現されたものに限りません。近年、文学に対する考え方は柔軟に拡大しています。フェミニスト批評やポストコロニアル批評といった文学理論を用いた分析を応用してアニメーションを分析することもできます。例えば、『レミーのおいしいレストラン』は、ネズミのレミーと青年リングイニがビストロをオープンするハッピーエンドで終わりますが、レミーがネズミである点に着目すると、この結末の危うさが見えてきます。ネズミの寿命は5~6年で、長くは続かないのです。物語の隠れた構造を読み解く目的は、物語を批判することではありません。バランスをかろうじて保っている部分を見抜く力を養いたいのです。現実の社会構造にも歪みや矛盾は隠されています。物語を深く読み解く想像力は、私たちの生きる社会を分析することにもつながるのです。
あなたの解釈が未来の新たな可能性につながる
物語はつねに新しい解釈を生みます。作曲家が残した音楽が、多くの演奏家たちによって繰り返し演奏され続けるのと同じです。文学もまた、何度も読み直され、解釈されていきます。素晴らしい名演奏が生まれても、それで終わり、というということはありません。物語も新たに解釈されることによって、誰かの好奇心を引きだし、未来に新たな解釈の輪が生まれていくのです。
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先生情報 / 大学情報
大正大学 文学部 人文学科 教授 伊藤 淑子 先生
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