受精や胚発生の仕組みを探究し、優秀な家畜の生産に貢献する
生命のスタート地点を研究する
生命の始まりは、精子と卵子の合体、すなわち「受精」の瞬間です。受精に関する研究は古くから行われ、さらにそれを人の手によって操作することも長い歴史があります。「人工授精」は、精子を子宮に注入し子どもを得る技術ですが、約240年前に犬を使った人工授精が成功しています。その後、多くの哺乳動物において人工授精が成功・普及しています。現在、日本で産まれる牛は、ほぼ100%が人工授精によって誕生しています。また、体外で精子と卵子を受精させる「体外受精」という技術も広く普及しています。
体細胞クローン技術の研究も
人工授精や体外受精は、「精子と卵子が受精して子供となる」という自然の営みを、人の手によって起こす技術です。それに対して、「体細胞クローン技術」は、精子ではなく細胞を直接、卵子に送り込み、細胞を採取した個体のコピーを作る技術です。これは自然界では決して起こらない現象です。
人工授精や体外受精は、家畜の生産に活用されるだけでなく、人の不妊治療などにも応用されています。一方、体細胞クローンは、家畜においても技術的な問題により、まだ実用化されていません。しかし、この研究と技術は、将来的には優れた家畜の増産を可能とし、すでに胚発生の仕組みの解明やiPS細胞の開発など生命科学の発展に大きく貢献しています。
胚発生に関わる遺伝子を見つける
人工授精や体外受精の成功率を上げるための研究が進められています。例えば、体外受精した受精卵が効率よく発生し、さらに無事に着床するためにはどのような遺伝子が胚の中で発現する必要があるのかを解明する研究などです。それらの遺伝子を特定することで、胚発生や着床率の向上が期待でき、人の不妊治療への応用も可能です。生命のスタート地点の研究は、畜産と医学の双方に関わる重要な領域なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 動物科学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 動物科学コース所属) 教授 澤井 健 先生
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