ビタミンには偽物がある? シュードビタミンの不思議を探る
偽物のビタミンとは
魚や肉などの動物性たんぱく質に多く含まれるビタミンB12には、「シュード(偽物)」と呼ばれるタイプがあります。ビタミンは13種類ありますが、食品に含まれるビタミンでシュードタイプを持っているのはビタミンB12のみです。シュードは体内に取り込まれてもビタミンB12として機能しません。シュードを含む食品を食べても人間の体に害はないものの、ビタミンB12だと思って摂取していても、実際には栄養素が足りなくなる可能性があります。
シュードビタミンB12を含む食品の特徴
菜食主義や、無農薬の穀物や野菜を中心とした食事法「マクロビオティック」などを心がけている人は、主に肉や魚に含まれるビタミンB12が不足しがちになります。そのためビタミンB12を多く含むといわれていたスピルリナという藻類への注目が高まりました。しかしスピルリナが持つビタミンB12はシュードだと判明し、ビタミンB12の補助食品として効果的ではないとわかりました。また、藻類を餌としている巻き貝にもシュードが含まれています。一方でプランクトンを食べている二枚貝にはシュードが含まれないため、生物が摂取する餌がシュードの含有量を左右していると考えられています。また、シュードが作られる過程には微生物がかかわっていることが明らかになってきました。例えば乳酸菌を使ったチーズなどを分析すると、微量ですがシュードが含まれていることがわかっています。
食品成分表の課題
食品に含まれる栄養素の量は『食品成分表』を見ればわかりますが、ビタミンB12の項目はシュードを含んだ量が記載されています。例えばスイゼンジノリという食品はビタミンB12を非常に多く含んでいますが、詳しく分析すると大半がシュードです。しかしビタミンB12とシュードを区別することはとても困難です。分析するための機材は高価ですし、精密な分析ができる人材も育成しなければなりません。より汎用性が高く正確な測定方法を見つけることも、シュード研究における今後の課題といえます。
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東京農業大学 国際食料情報学部 国際食農科学科 准教授 谷岡 由梨 先生
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