講義No.08413 応用化学

味や食感を「見える化」し、おいしさを「科学する」

味や食感を「見える化」し、おいしさを「科学する」

魚の味の「見える化」でニーズを刺激

家庭の食卓に並ぶ魚をイメージしてみてください。マグロ、サケ、サバといった一定の魚しか思い浮かばない人も多いのではないでしょうか。日本で食べられる魚は約500種類もあります。しかし、一般家庭で実際に買って食べているのは、そのほんの一部です。その要因の1つとして、「食べたことがないもの」「味がわからないもの」は購入しにくいと考えられるからです。では、もし、スーパーに並ぶ魚が「パッケージを見たら味がわかる」ようになっていたらどうでしょう。選択の幅が広がり、「買ってみよう」というきっかけになるかもしれません。

微生物の活用で新たな商品開発も

「味の見える化(可視化)」は、ワインといったお酒やお米など一部の食品での表示が始まっています。魚介類においても、地域や世代などで異なる味覚を考慮しながら、成分分析やトレーニングされた人によるチェックを通じて、「香り、食感、味わい」といった客観的な味のマッピングの研究が進んでいます。
さらに、加工によって魚介類の活用を広げる方法もあります。自然界には食品に利用できる微生物がたくさんいます。微生物を解析して特性を明らかにし、食材に活用することで、例えば魚を原料にした液体の調味料の「魚醤(ぎょしょう)」などといった新しい商品の開発につながります。

食品工学が、食環境を変えていく

例えば、静岡県ならみかんやわさびといった特産品と水産物のマッチングも考えられます。これにより、地域活性化につながる新しい商品を見いだすこともできます。また、どんなにおいしい料理でもレトルトや缶詰にすると味や香りが変わるため、商品化されていないものもありますが、原料や加工法を工夫するとレトルト化を実現することも可能です。
このように食品を生物学、化学、物理学的にとらえ、加工や保存、調理するための実学的学問があります。食の環境をより豊かにし、安全・安心を確保しつつ、商品化や地域貢献につながる分野だと言えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 海洋学部 水産学科 教授 後藤 慶一 先生

東海大学 海洋学部 水産学科 教授 後藤 慶一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品加工学、食品微生物学、発酵学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人が生きていくために食べ物は不可欠です。食べ物に関してもっと関心をもってください。すると、いろいろな疑問や発見があるでしょう。食べ物の多くは、先人の知恵のたまものです。しかし、まだ解明されていないことや、食品の有効活用における改善の余地もたくさんあります。
さらに、2020年に向けて食品衛生管理の国際基準である「HACCP(ハサップ)」が義務化される動きがあります。この点からも、今後ますます食品工学の役割が重要になってきます。そんな未知数で奥深い食品工学の研究に一緒に取り組んでみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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