魚が苦手な人も納得! 魚の「魚臭さ」を解明する
健康効果に優れた魚の残念な性質
魚には豊富なタンパク質のほか、血液をサラサラにしてくれるDHAやEPAなどの栄養素が多く含まれています。そのため魚はぜひとも食事に取り入れたい食材ですが、魚には品質の劣化やにおいの変化が早いという難点があり、それが原因で魚を苦手と感じる人も少なくありません。そこで、生魚や真空包装された魚の加工品のにおいが時間の経過とともにどのように変化するのかについて、ブリを使った研究が行われています。
におい成分を分析する実験
においの変化を調べる実験では、生魚の切身を氷の中で何日も保存して、魚からどのような揮発性の化合物が出てくるかを一定の時間ごとに追跡します。魚のにおいは揮発性成分の複合体であるため、まずガスクロマトグラフィーという装置を使ってにおいに含まれる化合物を分離します。そして質量分析装置で化合物を同定するとともに、実際に人がにおいを嗅いで分析します。においの複合体には、アルデヒドやケトン、ヘキサノールなどが含まれることがわかっていますが、微量すぎて検出されない成分もあり、その全体像はまだわかっていません。
油の酸化がにおいのカギ
におい成分の分析から、魚のにおいが生成される原因は、DHAやEPAといった魚油の酸化物であるらしいことがわかってきました。ブリの身には白い部分と赤い血合肉の部分がありますが、においが強くなるのは血合肉です。血合肉に含まれる赤い色素のミオグロビンというタンパク質は、油の酸化を促進する性質があります。そこで油の酸化を防ぐために、空気に触れないよう魚を真空包装にして状態の変化を調べたところ、におい成分の量を減らしてにおいを抑えられることがわかりました。
今後はさらに変化を調べる期間を延ばして、魚が腐るまでにはどのような細菌とにおいが増えるのか、検証が進められます。安心安全を高めるために、魚の状態を客観的に判断できる指標となるようなにおい成分の発見が目標とされています。
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