食料は誰がどのようにつくり、どう運ばれ、どう消費されるのか?
食の生産と消費の関係
現代の日本では、農家や食品メーカーがつくった作物・食品が、直接消費者の口に入ることはほとんどありません。加工や流通、小売りといったプロセスが複雑に入り組んでおり、消費者と生産者との間に距離が生まれているのです。食料経済学や農業経済学という分野では、この消費者と生産者の関係性に着目し「食料は誰が、どのようにつくり、いかに運ばれ、また消費者はどういう観点からそれを選択するのか」を明らかにします。そして、持続可能な食の生産と消費の関係づくりに生かす研究が行われています。
食を取り巻く矛盾
日本の農家は、健康や環境に配慮した作物や加工品をたくさん開発・販売していますが、その多くは適正な価格で取引されていないのが現状です。農家のこだわりや思いが収益に結びつきにくいこともあり、日本の農業生産者は減り続け、現在では農家数が200万戸を下回っています。一方で、日本では年間約600万トン、約2億人の飢餓人口を救えるだけの食料が廃棄されています。これには店頭や飲食店における在庫切れを防ぐために供給過多になっていることや、賞味・消費期限に厳しいという傾向が影響しています。
東大阪市での取り組み
こうした生産と消費の課題を見直し生産者と消費者をつなぐうえで興味深い例が、大阪府東大阪市の都市農業で見られます。同市では大阪府が認証する、農薬や化学肥料の使用を抑えた「エコ農産物」の生産に力を入れ、市内の野菜直売所などで販売しています。消費者はエコ農産物に貼られているシールを一定数集めることで割引を受けられ、さらに「地元・東大阪の農地を守った」として感謝状が贈呈されます。この仕組みが徐々に評判を呼び、今では直売所に出荷する市内農家のほとんどがエコ農産物を生産しています。味や鮮度はもちろん、「感謝状」というツールを通して生産者の気持ちが消費者に伝わります。また消費者の購買行動や地域愛が生産者にフィードバックされるという好循環が生まれており、他地域からも大きな注目を集めています。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 生活環境学部 文化情報学科 講師 青木 美紗 先生
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食料経済学、農業経済学先生が目指すSDGs
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