食品の「フワフワ」「トロトロ」の特性は科学で作れる?!
食品の食感や特性を客観的に表す食品物性学
食品を食べて、食感や形状を表現する時には、「さらさら」「どろどろ」「硬い」「軟らかい」「ふかふか」「さっくり」など、さまざまな言葉を使います。こうした言葉だけで、食感や形状を正確に伝えることはできません。あなたが評価した「硬い」と、ほかの人が評価する「硬い」は、必ずしもイコールではないからです。そのため、食品を扱う会社や機関では、硬さや粘り気を数値化し、客観的に判断できることが求められています。硬さであれば、ものを押した時の反発力、粘り気であれば流れる時の速度を測るといった具合です。食品の特性を解析し、食品によって硬さや粘り気の程度が異なる理由を明らかにする学問を「食品物性学」と呼びます。
食品開発に不可欠
食品の物性を測ることは、一般向けの新食品から、子ども・高齢者向けの介護食など、広い年齢層を対象とした商品開発にも利用されています。社員のひらめきから生まれた大ヒット食品もありますが、実際の商品開発では、食素材、食感、形状などを研究し、既存の商品と比較したりして、今までにないものを作ることが食品開発者の役割です。人間は年齢を積み重ねると、嚥下(飲み込み)機能が衰えてしまい、誤嚥(ごえん)といって食べ物が食道ではなく、誤って気管に入ってしまいやすくなります。そのため、食品に適度なとろみをつけて粘り具合をコントロールすることで、気管に入るのを防ぐような食品を開発して商品化するのです。
食べた時の感覚の解明をめざして
食品物性学が大きな役割を果たすのは食品開発のためだけではありません。私たちは濃い砂糖水は甘くて飲めませんが、砂糖が多く含まれるようかんは食べられます。含まれる味物質の量が同じでも、食品の状態によって感じる味の強さが異なるのです。食品の物性と味を感じる仕組みの関係を解明するには、まだまだ多くの研究が必要ですが、「食べ物」としての状態を調べた先には、それを食べる「私たちの感覚」の解明につながる、いわば「食を支える」研究領域なのです。
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先生情報 / 大学情報
東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科 教授 阿久澤 さゆり 先生
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