川と海との関係は、社会にどんな影響をもたらす?
川が海にもたらすメリット
沿岸の環境を考えるとき、川の影響は重要です。日本国内には一級河川は約1万4千本、その他も合わせると3万5千本以上の川が存在します。川は陸と海とつなぐ役割をしており、沿岸域に流入する淡水は豊富な栄養分を含んでおり、植物プランクトンや海藻など植物の生産に欠かせないものです。これに加え、河川は沿岸域に土砂を供給しています。貝などの生息場になっている海岸の砂浜は、海からの波によって削られて砂が流出します。砂の供給がなければ砂浜そのものを維持できなくなってしまいます。この一部を河川からの流入土砂が補填しているのです。このように沿岸域は河川があることで、魚や貝、海藻などの生息する場所として成り立つことができるのです。
大雨の時にもたらされるデメリット
川から海への出水は、良いことばかりではなく、課題となっている側面もあります。台風や大雨によって川の水量が増えると、川を通じて大量の流木やゴミを一気に海へと放出してしまい、河口沿岸域にさまざまな被害をもたらすことがあります。また、大雨や台風の時には、川から海へと流出する土砂の量も膨大になります。このとき細かい土砂を考えると、この土砂は海底に沈みにくくなり、拡散して、河口沿岸域の一帯を泥水に変えてしまいます。海水が濁ると、日光が海中に届きにくくなり、そこで光合成して生きている生物にダメージが及ぶ可能性があります。
海洋ゴミ対策に欠かせない研究課題
陸、川、海の関係を適切なバランスに保ち、河口沿岸域の生態系を健全な状態に維持するには、現地での緻密な調査が必要です。また、それによって得られたデータに基づくシミュレーションで、人間の手で改善できるポイントがないかを探っていくことも必要であり重要です。近年、世界的な課題となっている海洋ゴミやマイクロプラスチックも、その8割が陸地に由来するものとなっているため、こうした調査研究に基づく対策が欠かせません。川と海との関係に注目することは、私たちの社会を見直すことにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 生物学部 海洋生物科学科 教授 大橋 正臣 先生
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