学校や病院、非営利組織の奇妙な「会計基準」
会計基準はバラバラ?
株式を上場している一般企業は、自社の財務内容を開示しなければならないと、法律で定められています。株主に対する責任や社会的責任を負うためです。しかし、NPO法人や学校、病院などの非営利組織には、開示する義務がない場合が多く見られます。また、財務内容を示すためには「会計基準」というルールがあるのですが、団体を所管する省庁ごとに別個の会計基準が作られています。例えば、国立大学と私立大学は、同じ大学であるのに、会計基準が違っているため、単純に財務内容を比較してもあまり意味がないことになってしまいます。このように、非営利組織の情報開示については、さまざまな課題があることが指摘されています。
非営利組織の社会的責任
非営利組織には、学校、病院、NPO法人、公益法人、宗教法人、協同組合など、さまざまな形態があります。これらの団体は、営利を目的としないことから、税制上の優遇措置を受けています。ただし、研究していくと、非営利組織といえども、巨大な資金力を持つ団体がたくさん存在していることがわかります。
例えば生活協同組合(生協)は、法律上は非営利組織ですが、年間1000億円以上の売上がある生協も多く、流通システムなどもきわめて精緻なものが作られています。このような上場企業並み、あるいはそれ以上の利益を上げている団体に対しては、一般企業同様に社会的責任があり、情報開示をすべきだという声が高まってきています。
変わっていく非営利組織
こうした声を受けて、これまで公認会計士による監査が必要とされていなかった非営利の組織も、今後は順次、監査が実施されるようになっていきます。監査が入ったり、会計基準が変わったりすることで、非営利組織の運営は制約を受けることになりますが、それによって健全かつ公正な運営がなされることが期待されています。そのためにも、「非営利組織の会計基準がどうあるべきか」ということは、今後の大きな研究テーマなのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野大学 経営学部 会計ガバナンス学科 教授 鷹野 宏行 先生
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