日系企業の人的資源管理-海外という舞台では
日本型経営は海外でも通用するか
日本の製造業が海外に進出する際に、自社の経営システムはそのまま使えるのでしょうか。ある研究では、日本型の経営システム(終身雇用・年功序列・企業内組合)を持つ日系製造業が、東南アジアのマレーシアに進出した事例が分析され、日本との労働市場の違いや日本型経営を展開する難しさなどが示されました。
すぐに転職? マレーシアの労働市場
マレーシアは、1990年代に経済成長期にあった日本や韓国から学ぶ「東方政策」を打ち出したこともあり、親日感情が高い国です。一方で、労働市場は終身雇用や年功序列ではありません。民族もマレー人や華人、インド人など多様であり、「ブミプトラ」というマレー人の雇用を優遇する政策が特徴的です。また、労働においてお金を重視する人たちが多いため、よりよい賃金を求めてためらわずに転職する国民性も見受けられます。そのため多くの日系企業は、時間をかけて人材を育成しても、技術やノウハウを身につけた人たちがすぐに転職してしまうリスクを抱えているのです。日系企業の経営者からは、「従業員の定着をはかるために、相手を理解する姿勢を示したり、自社の経営方針や福利厚生といった情報を積極的に開示したりして、企業と従業員の間の信頼関係を地道に作る」という声が聞かれました。
外国人材の受け入れ方
経済成長が続くマレーシアでは労働力不足も深刻であり、インドネシアやネパールなどからの外国人労働者を受け入れています。ただし、現地に根を張り長年暮らす「移民」としてではなく、あくまでも「労働力」として受け入れており、滞在期間は最長5年と厳しく定められています。そのためマレーシアの日系企業の間でも、国外の労働者を従業員にするかは対応が分かれ、ある会社は全く採用しないという方針でした。
このような事例の研究は、海外進出してグローバル化を進める企業だけでなく、外国人材を受け入れようとする日本国内の企業にも多くのヒントをもたらすはずです。
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