世界の海のプラスチックごみを減らすことはできるか?
生態系への悪影響が心配なプラスチックごみ
世界の海に漂うごみには、自然や生物由来のものだけでなく、プラスチックなど人工由来のごみも多量に含まれています。特に、プラスチックごみは自然界では分解されにくく、海洋生物がそれらを飲み込んでしまうなど、生態系への悪影響が懸念されています。そうした海ごみを回収して内訳や種類などを分析し、海ごみの排出量を削減するための対策に役立てようとする研究が続けられています。
海ごみ回収装置を使用して、実態を分析する
海ごみの回収作業では、オーストラリアで開発された「シービン」と呼ばれる海ごみ回収装置が活用され始めています。シービンは、水中ポンプを回収用のキャッチバッグと組み合わせた装置で、1台で1日に数キロの海ごみを回収できる性能があります。
海ごみを回収し、それらの内訳を分析すると、流木などの木片が6割、プラスチックなど人工由来のごみが3割、生物由来の物などが1割程度であることがわかりました。さらに、重量を計測したり、赤外顕微鏡付きFT-IR(赤外分光光度計)で分析したりしていくと、私たちが日常的に使っているポリプロピレンやポリエチレン等の製品の破片や、雨に流されて川から流出したと思われる人工芝のかけら、そして最近では不織布マスクなども多く含まれていることがわかりました。
現状を把握し、社会に知らせていくことの大切さ
地球上の海には、重量にして27万トン(5兆個)もの海ごみが漂っているとも考えられています。海ごみ回収装置を世界各地で多数稼働させたとしても、それらによって回収できる海ごみは、ごくわずかな量でしかありません。回収が難しいフリース生地の繊維やナノプラスチックの流出も課題となっています。
こうした人工由来の海ごみが生じる根本的な原因を解決するのは、容易ではありません。しかし、調査と研究によって現状を把握し、改善の可能性を検討し、社会に広く知らせていくことは、海ごみに限らず、環境問題全般において大切な姿勢なのです。
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武蔵野大学 工学部 サステナビリティ学科 准教授 真名垣 聡 先生
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