「壊れるのを予想できる」から信頼されている、医療用材料とは?
医療分野で主に使われている材料は「金属」
金属・セラミックス・プラスチック(高分子)は、「三大材料」と呼ばれています。医療材料としては、約2500年前、エジプトで金が人体構造維持のワイヤーとして利用されたのが始まりのようです。セラミックスやプラスチックにおいては、ここ30~40年で劇的に研究が進みました。その結果、この分野では、金属のシェアがどんどん奪われていきました。しかし、現在でも人工関節やペースメーカーなどの医療材料は、金属が主流で約70~80%を占めています。なぜなのでしょうか?
金属を使うメリットは「信頼性」
医療用の材料に金属が使われるのは、「壊れるのを予想できる」という信頼性が高いからです。まず、プラスチックはそれほど強くないため、力がかかるところに使用するのは不向きです。一方、セラミックスは硬くて強い材料です。しかし、陶磁器を床に落とすと割れる場合もあれば割れない場合もあります。これは壊れるのを予想できないということです。
一方、金属では原子同士が「方向性のない結合」で結びついているため、一部の結合が壊れてもまわりが原子レベルで少し変形することで、全体として壊れることはありません。結合が一気に壊れないので、全体として壊れるのを予想できます。
「異物」である金属を体になじませるには?
硬い金属の人工関節を骨の近くに入れると、そのまわりでは新しい骨を作ろうとしなくなるため、骨がやせ細ってしまいます。それを防ぐには、その金属を骨と同じようなたわみ方をするように軟らかく作る必要があります。最近では、3Dプリンタを用いて金属の中にすき間を作ることで理想的なたわみ方を作り出すことができるようになりました。
また、本来、ヒトの体内に金属は存在しないため、体の中に金属を入れると「異物」として認識されます。骨に似た性質をもつセラミックスをその金属にコーティングすることで、体をだまし、骨の再生を促進させる技術も開発されています。こうした工夫によって、より効果的な治療が実現されているのです。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 教授 上田 正人 先生
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