海底の泥から、毒を処理する細菌を探せ!
化学処理の肩代わり
環境中には多種多様な微生物がいます。その中には、汚染物質を無害化してくれるものが存在します。工場からの排水や工場の跡地などにおいて、重金属による環境汚染が問題となることがあります。六価クロムもその一つです。通常は化学処理で対処していますが、環境修復を生物に行わせる「バイオレメディエーション」は、環境負荷が小さいと言われており、研究が行われています。
海底堆積物から細菌を探す
クロムは遷移元素の一つであり、複数の酸化数を示します。主なものは、三価クロムと六価クロムです。それらは異なる性質を示し、毒性の強い六価クロムに対して、三価クロムは安全なものです。そのため、六価クロムの化学処理では、六価クロムを還元することにより、三価クロムに変えます。微生物の中には、この還元反応を行い、六価クロムを無害化するものが存在します。これまでにさまざまな微生物が分離されて研究が行われていますが、土壌サンプルに比べると、海洋サンプルからの研究例は多くありません。そこで、海底堆積物などの海洋サンプルに存在する細菌が調べられています。
役に立つ細菌だけを取り出す
海底の泥にはたくさんの細菌が存在しています。採取した泥から、いろいろな培養条件で、細菌を分離します。そして、分離された菌株の中から、まずは六価クロムに耐性を示す菌株を調べます。環境基準値を上回る濃度の六価クロムを含んだ培地での菌株の増殖を調べることにより、六価クロムへの耐性を評価します。ただし、六価クロムに耐性を示す菌株のすべてが六価クロムを還元するとは限りません。六価クロムへの耐性と六価クロムの還元は必ずしも同じことではないからです。そこで、六価クロムに耐性を示す菌株の中から六価クロムを還元できる菌株をさらに探して、それらの菌株の諸性状が調べられています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 准教授 寺原 猛 先生
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