講義No.14322 応用物理学

医療から半導体まで! 小さなナノ粒子が持つ大きな可能性

医療から半導体まで! 小さなナノ粒子が持つ大きな可能性

ナノ粒子なら応用先はさまざま

ナノ粒子とは、結晶などの塊を100ナノメートル前後の大きさの粒子に細かく砕いたものです。もともと水に溶けない物質でも、ナノ粒子にすればコロイドになって溶けるため、ナノ粒子はさまざまな分野での応用が可能です。例えば、薬を飲み込むことが困難な患者には注射や点滴を使いますが、薬が水溶性でない場合は注射や点滴にできません。この問題も、薬をナノ粒子にして溶かせば解決できます。そのほか、車の塗料の顔料もナノ粒子にすれば色が鮮やかになり、光触媒に使われる酸化チタンもナノ粒子にすれば表面積が増えて効果が上がると考えられます。

水に溶けない物質をナノ粒子化

溶液中で安定したナノ粒子を作るために、レーザー照射を使った研究が行われています。物質をすり鉢などで砕いて作ったナノ粒子は時間がたつとまた塊に戻ってしまいますが、レーザーで物質を砕くとナノ粒子が安定するという特徴があります。これはレーザーが物質の分子の結合まで壊してしまうためだと考えられています。研究では60個の炭素が球状に結合した「フラーレン」を対象として、水に溶けない物質がナノ粒子化すると溶ける現象について調べられています。フラーレンは対称的な構造で極性がありませんが、レーザー照射により原子間の結合が切れて極性が生じ、水中で安定化します。レーザーの強度や照射時間、溶液中のフラーレンの量や温度、かける圧力など、ナノ粒子を効率よく作れる条件が模索されています。

抗がん剤や半導体技術

また、抗がん剤や半導体への応用についての研究も進められています。体の中にはいろいろな細胞膜があり、特定のサイズのナノ粒子を透過させる速度は場所によって異なります。したがって、どのサイズのナノ粒子が体のどこによく集まるかがわかれば、抗がん剤の粒子のサイズを調整して特定の細胞だけに作用させることが可能になります。また、金属のナノ粒子は、超微細化が進んでいる半導体電子材料に利用できると期待されます。

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和歌山大学 教育学部 教育学科(科学教育) 教授 顧 萍 先生

和歌山大学 教育学部 教育学科(科学教育) 教授 顧 萍 先生

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応用物理学、物性物理学

メッセージ

私が中国から日本に来た1990年頃は、日本から海外へ行く留学生がたくさんいました。ところが、最近は海外留学する学生の数は減っています。海外で多様な価値観に触れることは、視野を広げる貴重な経験になります。研究の道に進むのであれば、世界中の研究者との交流が必要ですし、会社に就職するとしても、企業のグローバル化が進んでいます。教師をめざす場合も、日本の学校に通う外国人の子どもが増えている今、留学の経験は役に立ちます。機会があれば積極的に利用して、海外へ行ってみてください。

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