材料科学の難問「トレードオフ」の打破に挑む!

チタンの利用で環境への負荷が軽減
マグネシウムやアルミニウム、チタンなど軽金属への注目が高まっています。同じ強度にして比べると鉄よりも軽いため、自動車や航空機に使うことで燃費が良くなるなど、軽金属にはさまざまなメリットがあるからです。それらにより環境への負荷も軽減されます。
中でもチタンは強度があり、さびにくく耐久性が高いため、自動車や航空機のほか、医療分野、時計・メガネなどの装飾品、スポーツ用品に利用されています。さらに、宇宙分野での活用も期待されています。その一方で、強度や延びやすさ(延性)、しなやかさ(柔軟性)といったチタンが持つ特性をさらに高めて用途を広げる研究が行われています。
強度を高めればしなやかさが失われる
こうした特性を高めるために、チタンにほかのさまざまな元素を混ぜたチタン合金が探究されています。しかし、合金をつくって強度を高めると、逆に延性や柔軟性が低下するといった問題が生じます。これを「トレードオフ」と呼びます。トレードオフは非常に難問で、世界中の材料科学者がその解決に取り組んでいます。チタンと混ぜる元素の種類や数、混ぜる割合を変えるなど、さまざまなアプローチによって特性の両立をめざしています。また、元素の混ざり具合を均一にするのではなく、加工方法を工夫してあえてムラをつくり、強い部分としなやかな部分を併存させる、といった戦略もトレードオフの打破に有望です。
生活を一変させる新合金の可能性
優れたチタン合金は、人工骨といった生体材料に応用されるなど、困ったり苦しんだりしている人の役に立つことができます。もしかしたら、私たちの生活を一変させるような合金が生み出されるかもしれません。とはいえ、チタンは高価です。優れた性能を持つチタン合金をさらに普及させるには、チタンの付加価値をもっと高めることが必要です。やはり、トレードオフの打破、複数の機能を同時に発揮させること、が鍵になりそうです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

富山大学都市デザイン学部 材料デザイン工学科 教授石本 卓也 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
構造・機能材料科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?