触媒と電気で省エネに! 二酸化炭素を役立てるためのアプローチ

触媒と電気で省エネに! 二酸化炭素を役立てるためのアプローチ

触媒でカーボンニュートラルを

地球温暖化問題の解決に向けて、世界中でカーボンニュートラルの取り組みが進んでいます。特に、二酸化炭素を回収して工業原料やエネルギーに転換し、再利用するアプローチが注目されています。物質を別の物質に変換する時によく用いられるのが、化学反応を促進する「触媒」です。そこで、できるだけエネルギーを使わずに二酸化炭素を有用な物質に転換する触媒の研究が進められています。
二酸化炭素と水素を混ぜて触媒に触れさせると、CO₂+H₂→CO+H₂Oという化学反応が起こり、一酸化炭素が発生します。一酸化炭素はプラスチックやメタンガスの原料になりますし、そのまま燃やしてエネルギーとして活用できるのです。

半導体物質を組み合わせる

この化学反応には白金(プラチナ)など金属触媒が使われます。これまでは、反応が進む500~600℃という高温にするためのエネルギーが必要でした。しかし近年、触媒に電流を流すことで、100℃程度の低温で反応が進む、省エネルギーな手法が開発されました。
その際、触媒に使われる電気が流れやすい金属に、酸化チタンなどの半導体物質を組み合わせることで、触媒反応にちょうどよい電流に抑えることができます。この手法を応用すれば、例えば発電所や工場など、二酸化炭素と熱が排出される場所で触媒を使って工業原料やエネルギーを生み出すことができます。

もっと安く、もっと使いやすく

これからの課題の一つは、貯蔵しやすい液体の形に変換することです。一酸化炭素からアルコールやガソリンをつくることもできるため、複数の触媒反応を同時に進めて液体の物質に変換すれば、より有効活用ができると考えられます。
また、白金は高価なため、鉄などの安価な金属を触媒として使う研究も進んでいます。鉄でも白金と同様に、微弱な電流で触媒反応が起こることがわかっています。さらに、工場などの排出ガスから二酸化炭素だけを集めて回収することにも、触媒を使う方法が検討されています。

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先生情報 / 大学情報

高知大学 農林海洋科学部 海洋資源科学科 海底資源環境学コース 准教授 小河 脩平 先生

高知大学農林海洋科学部 海洋資源科学科 海底資源環境学コース 准教授小河 脩平 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

触媒化学、水熱化学、電気化学、材料化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「農林海洋科学部」という名称から、農業や漁業、養殖の研究をしているイメージを抱かれます。しかし、私が所属する海底資源環境学コースは、海底にあるレアメタルなど海底資源の研究をしており、工学、化学、地学といった分野です。海底のレアメタルの地球史の観点での調査や、その工学的な応用の研究、また船でのフィールドワークもあります。地方の大学ですが、この分野では世界で3つしかない海洋研究の拠点の1つです。世界中から多くの研究者が訪れる、活気ある環境で学べるのも魅力の1つだと思います。

先生への質問

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高知大学に関心を持ったあなたは

高知大学は、四国山地から南海トラフに至るまでの地球環境を眼下に収め「地域から世界へ、世界から地域へ」を標語に、現場主義の精神に立脚し、地域との協働を基盤とした、人と環境が調和のとれた安全・安心で持続可能な社会の構築を志向する総合大学として教育研究活動を展開しています。
教養教育、専門教育、正課外教育やインターンシップを通じ「表現力」「プレゼンテーション能力」「コミュニケーション能力」「異文化理解能力」「情報活用能力」の5つの能力で社会の力になる21世紀の知識創造社会で活躍できる人材を輩出します。