美容や記憶、味覚によい作用を及ぼす! D-アミノ酸の可能性
健康に欠かせないアミノ酸とは
アミノ酸は私たちの生命を支える重要な役割を果たします。全部で20種類あり、食事から摂取する必要のある必須アミノ酸と、体内で合成される非必須アミノ酸に大別されます。例えば、スポーツドリンクなどに使われるバリン・ロイシン・イソロイシン(BCAA)、うまみ調味料に使われるグルタミン酸などがよく知られています。また、アミノ酸は、鏡合わせのように左右反転した分子構造をもつL-アミノ酸とD-アミノ酸に分かれており、近年は分離技術が発展したこともあって、D-アミノ酸の研究が進んでいます。
大きな可能性をもつD-アミノ酸
D-アミノ酸は果物や野菜、ヨーグルトやビール、チーズ、納豆(特に糸の部分)といった発酵食品に多く含まれています。L-アミノ酸と同じ元素や原子団をもちながらも、性質は異なっていることから、美容や食品、医薬品など、私たちの身の回りのさまざまな製品に使われています。ある実験では、D-アミノ酸は水やL-アミノ酸よりもコラーゲンの産生促進効果が高いことがわかり、皮膚の加齢にともなう老化を抑制する効果が確認されています。また、脳の神経伝達をスムーズにして記憶や学習をサポートする働きがあることや、日本酒をはじめとする飲食物の味や総合評価を高めることも明らかになっています。
工学的観点から分子レベルで究明
注目を集めるD-アミノ酸は、複数の学術分野で研究されています。食品科学や栄養科学の観点からは、D-アミノ酸がどの程度含まれているかという分析や、D-アミノ酸が起こす現象についての研究がなされています。
ほかには、分子レベルからの研究を極めようとする「酵素工学」という学問分野もあります。D-アミノ酸をはじめとする有用な化合物の合成に役立つ酵素の働きや、そうした酵素がどのようにして微生物の中で生合成させるかを究明するとともに、その研究成果を生かしてさまざまな製品も生みだしています。つまり酵素工学は、基礎研究と応用を兼ね備えたさまざまな可能性を秘めた学問といえるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 教授 老川 典夫 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
酵素工学、タンパク質工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?