隠れた主役! 「界面」からモノの仕組みを探る
あらゆる分野につながる界面の問題
「界面」とは2つの物質が混じらずに接している境界のことを言い、物質の一方が気体や真空の場合にそれを「表面」と呼びます。界面・表面の研究は、あらゆる分野の問題解決につながっています。例えば、自動車や飛行機の車体や機体に樹脂を使えば軽量化できますが、金属製の骨組みに樹脂をくっつけるのは容易ではありません。金属と樹脂の両方にくっつく接着剤を作るには、それらの界面の構造を研究する必要があります。また、水は生体の重要な構成要素で、細胞は水との間で薄い膜を介して物質をやり取りしています。つまり、水の界面を調べることは生命現象の解明に直結します。さらには、成層圏に浮遊する硫酸エアロゾルの表面ではオゾンが分解されているので、液滴表面の研究は環境問題に役立ちます。摩擦、帯電、接着から、太陽電池や有機ELまで界面が大事な役割を担っています。このように、工学、生物学、環境科学など、界面の研究はさまざまな問題解決の礎となります。
レーザー光で界面の分子の状態を調べる
界面の分子の状態を調べる方法のひとつが和周波発生です。周波数の異なる2つのレーザー光を試料に照射すると、2つの周波数を足し算した周波数の光が界面だけから発生します。分子の状態によって出てくる光の強度が変わるので、それを分析することで界面の分子構造を知ることができます。光さえ透過すれば試料の接着面をはがさずに、接着したままの分子の構造がわかります。
界面から仕組みを探る
普段当たり前に使っていても、仕組みがわからないことはたくさんあります。人は大昔から経験に基づいて接着剤を使ってきましたが、接着する仕組みは未だによくわかっていません。接着面の研究によりその仕組みがわかれば、接着剤の改良はもちろん、一度接着したものをはがすことも可能になるでしょう。また、新しい素材やデバイスの開発では、界面の問題は避けて通れません。ものづくりに分子レベルの情報が必要となる時代に入り、文字通り隠れていた界面が主役となりつつあります。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 工学部 総合工学科 物質科学コース 教授 宮前 孝行 先生
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