「もしこうなったら?」を人工世界を創ってシミュレート
現実を予測し理解する
シミュレーションとは、実際に何かを行う前に「もしこうなったらどうなる?」ということをコンピュータ上で模擬的に実験することです。例えば、首都圏での大地震を想定したシミュレーションが行われています。これは従来の地震の被害データや人的な流れのデータなどを全体的に統計・分析して導き出していますが、「マルチエージェントシミュレーション」という方法では、さらに一歩進んだシミュレーションを行うことが可能です。
複雑化する個々の動きも
マルチエージェントシミュレーションでは、人や生き物など個々の要素を「エージェント」と定義づけて、それぞれの動きを個別にプログラミングします。エージェントが一定条件のもとでどのような動きをするのか、さらに複数のエージェントが同時に動いた場合に集団としてどんな結果があらわれるのかをシミュレートしていく手法です。
通信販売の配送を例にとると、従来のシミュレートでは、1台の配送車がいくつかの配送先にどういうルートで走れば効率的に荷物を届けることができるのかを想定していました。マルチエージェントシミュレーションでは、複数の配送車がそれぞれの配送先に荷物を届けるのに効率的な各ルートを同時に導き出せるのです。複数のエージェントの複雑な行動パターンや起こりうる状況を組み込めるのが、このシミュレーションの最大の特徴です。
多様な情報化社会へのアプローチ
シミュレーションで得た結果を、いかに社会に生かすかが今後の課題のひとつです。近年は情報化が進み、膨大なデータが蓄積されています。そうなると「大量にあるデータの中から」抽出する、従来のトップダウン型の統計学的な分析手法だけでは、複雑に相互作用する情報を分析して全体像を理解するのは難しくなってきています。「末端にある個々のエージェント」をプログラムして、社会全体の動きをシミュレートし理解するという、マルチエージェントシミュレーションのボトムアップ型のアプローチがますます重要となるでしょう。
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