「トマトの音」ってどんな音?
植物のストレスを音で判別
トマトが発する音を聞いたことがありますか? トマトの苗木に水やりを制限すると、土から水を吸い上げる際に水の代わりに微細な空気の泡が入り込み、この泡が破裂して音を発します。これは、「アコースティック・エミッション(AE)」と呼ばれる超音波を含む弾性波(音波)の一種です。AEは非常に小さい音なので人間の耳でとらえることはできませんが、「エレクトレットコンデンサセンサ(ECS)」という装置を使えば正確に測定できます。AEは水不足以外にも日照、温度など植物がストレスを感じることで生じるので、AEを正確にとらえることができれば、より効率的な栽培が可能になります。
静電気が音の振動をとらえる
ECSの原理は、静電気を帯びた薄いシートが音によって振動し、その振動を電気信号に変えるというものです。ほかのセンサ(マイク)に比べて小型化できる点が特徴で、スマートフォンにも採用されています。その分、超音波の測定には不向きという特性がありますが、コンデンサセンサの内部にマイクロギャップという細かな空気の隙間をつくることで、AEのような超音波も測定できるようになりました。製造コストも低く、非常に頑丈で柔軟性も高いため、木に貼りつけてシイタケの菌糸が木の中に入り込んでいく音を録ったり、酒樽の中に入れて発酵によって生じる泡が弾ける音を録ることもできるのです。
ECSのさらなる可能性
植物や微生物などの活動の様子は、特殊なカメラや技法を使ってイメージング(画像化・視覚化)することもできます。しかし、それにはかなり大掛かりな装置や準備が必要なので、より実践的で応用範囲も広い点がECSを使った測定の長所とも言えます。
今後、装置の改良が進み、より高性能かつ小型化できれば、例えば化粧品が肌にしみ込む音や、バイオ燃料として注目されている藻が活動する音をとらえられるようになるでしょう。美容や環境をはじめとする幅広い分野に貢献することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
埼玉大学 工学部 機械工学科 教授 蔭山 健介 先生
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