財産隠しや証拠隠滅を防ぎ「訴え」を起こす 民事訴訟の手続きとは?
なぜ裁判所があるのか?
「貸したお金を返してもらえない」といったトラブルや、「盗難にあった自転車を取り戻したい」といった場合、どのように解決しますか? 力ずくで取り返そうとしますか? 実は、法律では「自力救済の禁止」といって、当事者が自ら解決することを原則禁止しています。なぜなら、力の強い者が勝ってしまう弱肉強食の世界になってしまうからです。
そこで、国は社会の秩序を守るため、裁判所を設置し、民事訴訟制度による解決手続きを用意していますが、日本では裁判に発展するケースは少なく、話し合いで解決する「示談」で終わるケースがほとんどです。しかし、近年、権利に対する意識が高まっており、訴訟に発展するケースもあります。
訴訟を起こすときに必要な手続きとは?
交通事故に遭い、3000万円の損害賠償を求めて裁判をするとしましょう。裁判中、負けそうだと思った相手は、家や車を売るなどして財産を隠す可能性があります。相手に支払うお金がなければ、勝訴した場合でもお金を払ってもらえません。そうならないよう「保全手続」があります。この手続きをとることで、相手が財産を売却できなくなるため、安心して裁判に臨むことができます。また、医療訴訟などの場合、カルテといった大切な証拠を隠される可能性もあるので、証拠を確保するために「証拠保全手続」を行うこともあります。こうした準備活動を経て「訴え」を起こします。
「勝訴」したといっても、解決ではない?
裁判で勝ったからといって喜ぶのはまだ早いです。「お金を請求できる権利」を勝ち取ったというだけで、相手が払ってくれない場合があるからです。そこで、場合によっては、銀行預金を差押えたり、不動産を競売にかけるなどの「執行手続」へと進み、お金を回収します。
しかし、相手がたくさんの人からお金を借りていて、全額返せないケースもあります。この場合、貸した金額に応じて公正に資産を分配したり、経済的な立ち直りを支援するために「倒産処理手続」がとられます。
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帝塚山大学 法学部 法学科 准教授 笹邉 将甫 先生
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