相手を納得させる文章とは? 理科教育で科学的な説明力を鍛える
理科で育む考察する力
日本の小学校では、子どもたちが理科の授業で実験後の考察に困る場面が多く見られます。国際的な学力調査でも、日本の子どもたちは論理的に文章を書く技能に課題があるとわかりました。そこで、理科の授業を通して考察の場面等で発揮する科学的な論述力を育てようと、書き方や教え方が研究されています。理科は専門的な知識を教えるだけでなく、科学的に物事を処理する力や人々に説明する力をつけることも目的とされているからです。
アーギュメントの教え方
「アーギュメント(argument)」とも呼ばれる科学的に説明を行う際は、主張に対する証拠を示し、証拠をどう解釈したかを説明することが必要です。例えば「今日のプールの授業は中止」と主張したあと、「なぜなら気温が低いから」と証拠を言い、「水温より気温が低いと水から出たとき体が冷えやすくなる」と理由付けをすれば説得力が高まります。こうした基本的な書き方を教えるときは、アーギュメントの代表的な「型」を利用すると効果的です。型にはさまざまなバリエーションがあり、難易度も異なります。小学1年生には「証拠と主張だけの型」、小学5年生には「複数の証拠と理由を挙げて主張する型」など、子どもたちの年齢や能力に合わせて教える型を変えると、アーギュメントの構成能力が身につきます。
学校全体で取り組む必要性
型に合わせて子どもたちに考察を書かせたあとは、要素に当てはまる文章に線を引いたり、抜け落ちている要素を指摘したりと、教師がフィードバックを行います。このような双方向の授業をくり返すうちに、子どもの科学的な論述力が伸びていくのです。そのためアーギュメントの教育には教師による長期的な指導が欠かせません。担任が替わっても指導を継続できるよう、アーギュメントの教育を実践できる教師を増やし、学校全体で取り組むことが必要なのです。
教師が考察に特化した教え方を知らないことも課題なので、教師の養成課程でもアーギュメントの大切さを伝え、効果的な教え方を伝える取り組みが行われています。
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大阪体育大学 教育学部 教育学科 准教授 神山 真一 先生
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