昨日の「常識」が変わるから、明日の法律を考える
環境法は環境を保護すための法
私たちの生存に不可欠な環境を保護するため、企業や消費者の活動を制限したり、逆にサービスや資金を提供したりする法が環境法です。「環境法」は法律の名称ではなく、環境を保護するためのさまざまな法の総称です。科学の世界では、新しい研究や技術によって、これまでの「正解」が「正解」でなくなることも珍しくなく、環境を保護するための「正解」も変わりえます。常に変化し続ける社会の中で、いまある法やあるべき法などを考えて「答え」を導き出していく学問が、法律学なのです。
原発の安全性と法制度
福島第一原発事故後の2012年、原子炉等規制法が改正され、バックフィット制度が導入されました。これは、以前に建設され既に運転を行っている原発にも、絶えず最新の基準を順守させて高い安全性を確保しようとする制度です。バックフィット制度の導入は、原発を常に最新の科学的知見に基づいてアップデートさせていくための法的な仕組みが出来上がったことを意味します。法律学は、「現在の制度や運用にどのような問題点があり、今後どのような制度や運用が必要なのか」、「他国ではどのような制度や運用があるのか」といった観点から研究を進め、社会に向けて発信していく役割も担っています。
法律と法律学のアップデートは終わらない
バックフィット制度ができても、それで完全な安全性が確保されるわけではなく、これをどう運用していくのかも重要です。また、既に廃止された、あるいはこれから廃止される原発への対応や、使用済み核燃料などの放射性廃棄物の処分といった問題もあります。科学技術は進歩し続けるし、電力に対する社会の需要も変わり続けます。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻のような社会的にインパクトの大きい出来事の影響から、新たな問題が浮上することもあります。「常識」とされている考えや仕組みは、常に「常識」のままではいられません。変化する社会のあり方や人々の考えを踏まえながら、法律や法律学もアップデートを繰り返していく必要があるのです。
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