経済が世界を動かす! これからの時代に求められる組織のあり方とは

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手をあげろ! 「ホールドアップ問題」

自動車メーカーA社が部品メーカーM社に部品を作ってもらうとします。その部品を作るためには、専用の機械が必要です。ところが、M社がこの機械に投資した後にA社が部品の価格を「当初の予定より安くして」と言ってくるかもしれません。M社の導入した機械はA社の車専用の機械で、ほかの取引相手の車には使えないので、M社はこの値下げ交渉を受けいれるしかなくなってしまいます。それを見越したM社はこの機械への投資を渋ることになるでしょう。この問題は、投資をした後では要求をのむしかない状態になってしまうという意味で「ホールドアップ(手をあげろ)問題」と呼ばれています。

「ゲーム理論」で戦略を考える

相手がいて、それぞれの意思決定が互いに影響を与える状況を「戦略的状況」と言います。「ゲーム理論」は戦略的状況での意思決定の問題の分析に用いられます。例えば、あるゲーム会社が新作をどんなゲームにするか検討しているとします。このとき自社のゲームの売り上げに大きな影響を及ぼすライバル会社の動きを考慮して決める必要があります。先の「ホールドアップ問題」では部品メーカーが、自動車メーカーは値下げ交渉をしてくると読んで投資を減らす決定をしています。このように相手の出方を読み合う戦略的状況の分析に有用なツールが「ゲーム理論」です。

「ホールドアップ問題」の解決と組織

では「ホールドアップ問題」を解決し、適切な投資が行われるにはどうすれば良いでしょうか。一つの方法は、長期的な取引を通じて、後から不当な値下げ要求をしないと信頼できる関係を築くことです。日本の自動車産業は系列取引と呼ばれる長期的な取引関係によって競争優位を持つと言われてきました。しかし、今後電気自動車が主流になる中で、ホールドアップ問題を引き起こした「専用の(関係特殊的)投資」の重要性は小さくなると言われています。そうなると組織のあり方や取引の方法を見直す必要が出てくるでしょう。

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帝塚山大学 経済経営学部 経済経営学科 教授 熊谷 礼子 先生

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