化学反応式が同じでも、条件が違えば構造や機能は大きく変わる
同じ化学反応式でも、多様な物質ができる?
化学反応式が同じでも、条件を変えたり、反応とは直接関係のない物質を加えたりすることで多様な物質の生成が可能です。
例えば、マンガンイオンと水から二酸化マンガンができるという酸化反応が知られています。この反応で電解質に新たに陽イオンを加え電極間の電圧を調整すると、一般的な二酸化マンガンの粉末結晶ではなく、マイナス電荷を帯びたシート状のマンガン酸化物が加えた陽イオンをサンドイッチしたような、層状のマンガン酸化物を薄膜として作ることができます。電気めっきのような反応です。
層状の薄膜マンガン酸化物の機能と特性
この層状の薄膜マンガン酸化物には、マンガンシート間の陽イオンと電子を出し入れするという電池のような機能があります。これはキャパシタと呼ばれる電荷貯蔵デバイスに応用できます。電池に比べると電圧は低いのですが、表面積が広いので応答速度が速く、充電時間もかからないという特色があります。モバイル端末のようなスピードが要求される電子機器に適しています。
層状の薄膜マンガン酸化物の機能は、陽イオンの物質を何にするか、どの程度の電位差にするかで別の特性、機能をもった材料にもできます。このことからわかるように、1つの化学反応式にも多様な可能性が含まれています。それを実験の積み重ねで発見して、注目した機能や特性を制御する方法を見出すことが重要なのです。
海底にあるレアメタルの析出過程を予測
実は、この層状のマンガン酸化物は海底の「マンガン団塊」を構成する天然の鉱物と同じ構造をもっています。マンガン団塊の場合は層間にニッケルやコバルトというレアメタルを貯蔵しています。この鉱物が1~10mm程度成長するには100万年かかりますが、実験では数10分から数時間で同じ厚みになります。この実験から、鉱物の成長過程はもちろん、産業に有用なレアメタルの海底での濃縮過程を予測することや、自然界で長い期間で行われている化学合成のメカニズムを明らかにすることができるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 工学部 応用化学科 教授 中山 雅晴 先生
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