宇宙で液体燃料の燃焼メカニズムを解き明かす
液体燃料の燃焼メカニズムを明らかに
国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で、史上初の液体燃料の燃焼科学実験が行われ、無事成功しました。「燃焼」とは、燃料と酸素が高温になることで反応して熱エネルギーが発生する現象です。液体燃料の燃焼とは、微小な液滴(えきてき)の集まりである噴霧の燃焼を意味します。液滴は高温になると気体になりながら燃焼しますが、それがどのように燃え広がるかを実験しようというのです。
燃料粒の燃焼には「液滴燃焼」と「群燃焼」がある
液体燃料の粒の燃焼には2つのレベルがあります。1粒の液滴が燃焼すると液滴のまわりに高温の火炎が形成されます。これが「液滴燃焼」です。さらに、2つの液滴が燃焼すると1粒よりも高温の範囲が広がるので、さらに遠くの3番目の液滴へも燃え広がることが可能です。そこで、2つは近くに3つ目は遠くに液滴を配置して、ぎりぎり燃え広がる距離を計測します。これを基本単位にして、3次元空間の中にランダムに液滴が存在する液滴群の全体が燃焼する状態の「群燃焼」の発生を予測するわけです。宇宙実験ではランダム液滴群の燃え広がり実験も行います。
シミュレーションでは燃焼しないはずの領域が実際の宇宙実験では燃焼するかもしれません。宇宙実験の結果を元にシミュレーションの予測精度を向上させようと考えられています。
宇宙で実験を行う理由
宇宙で実験を行う理由は無重力だからです。微小な液滴の燃焼は、実は地上でも重力の影響を受けません。ところが、実験では大きなサイズの液滴にしなければ観察ができません。そうすると重力の影響を受けてしまいます。そこで、大きなサイズでの無重力実験が必要なのです。
地上でも落下実験によって1~3秒程度の短時間な無重力状態を作り出すことはできます。数滴の燃焼実験なら可能ですが、時間を要する燃え広がりの実験はできません。群燃焼になるとさらに長い時間が必要なため、地上での実験は困難です。宇宙空間でなければ、燃焼メカニズムの解明は難しいのです。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 工学部 機械工学科 教授 三上 真人 先生
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