光の当て方で植物の生産性は大きく変わる

光の当て方で植物の生産性は大きく変わる

光合成に関与するのは一部の光だけ

植物は、光合成によって光エネルギーを栄養に変換しています。しかし、光合成で吸収されるのは、実は一部の波長の光だけです。光合成を行う細胞小器官にあるクロロフィルという葉緑素は、太陽光の中から波長が450nm(ナノメートル)付近の青色の光と660nm付近の赤色の光を吸収します。また、人間の目に見えない400nm付近の光は、ビタミンCの含有量を増加させます。そこで、LEDの技術を利用して、このような光だけを植物に当てると、どのように生育するかという研究が行われています。

赤と青の光を交互に当てると収量が大幅に増加

実をつけないレタスのような葉物野菜は、光合成の影響が葉の成長に顕著に表れます。まず、赤色のLEDだけをレタスに当てると、葉も茎も細くなり正常に育ちません。ところが、赤と青を一緒に当てると正常に育ちます。青色の光は植物の形態形成を促していると考えられます。一方で、太陽光に似ている蛍光灯の光を当てたレタスと赤と青のLEDの光を当てたレタスを比較すると、LEDのほうがかなり早く生育します。ここまではよく知られた事実ですが、赤と青を12時間ごとに交互に当てたところ、最終生産物の重量でLED同時照射の約2.5倍という結果が出ました。

将来は照射条件に合わせて品種改良も

この照射方法は、植物栽培の生産性が大幅に向上するために注目され、新しく建設される人工光タイプの植物工場で導入されることが決まっています。ただ、この照射条件はレタス以外の植物にも当てはまるわけではありません。なかには収量が減る植物もあります。しかし、赤と青の光の強さの割合など条件の変更で解決できると思われます。
照射条件と光合成の関係については、まだよくわかっていませんが、もし明らかになれば、今度は植物のほうを低コストの照射条件に合わせて品種改良することで、さらに高い生産性が実現するかもしれません。

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山口大学 農学部 生物資源環境科学科 教授 執行 正義 先生

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栽培学

メッセージ

「農学」というと、野外で植物を栽培しているというイメージをもつ人が多いかもしれません。しかし、実験室で最先端の遺伝子工学の知識を使って分析や評価も行っています。もちろん、自然が相手なので成果が出るまでに時間がかかる場合もありますが、頭で考えたことを自然の中で確認したり、逆に自然を観察することでいろいろなヒントを得たりという、ダイナミックな研究を経験することができます。
農学は実学なので、世の中に役に立つことを考えるという面白さもあります。ぜひ、農学にチャレンジしてみてください。

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