プラスチックで、病気の予防や早期発見、治療ができる時代へ
次世代の高分子が医療を劇的に向上させる
医療現場では、カテーテルや人工臓器といった機器にさまざまな高分子(プラスチック・ポリマー)が使われています。中でも今、次世代の高分子として注目を集めているのが、スマートポリマーと呼ばれる機能性高分子です。
スマートポリマーは温度や光、pH(水素イオン濃度)、音、振動といった環境の変化を認識して、その性質を変化させることができます。これを目的に合わせてデザインし、例えばカプセル化して血管に流すことで、がん細胞にピンポイントで治療薬を投与できます。また、がん細胞のある場所に高分子が集まるようにして、がんの場所を特定することも可能です。
細菌感染の抑制や食品ロスの軽減にも有効
別のスマートポリマーとして、抗生物質が効かない黄色ブドウ球菌などの細菌を吸着して細胞膜を破壊する効果がある新材料が開発されています。スマートポリマーの構造をデザインすることで、細菌を破壊する一方で、ヒト細胞へは無害な材料を合成することができます。このフィルムを手術後の傷口に貼れば、感染症を防ぐことができます。またこの特性を生かしたラップを作れば、食品を細菌から守ることができ、長期間の保存が可能となります。日本の食品ロス問題にも貢献できるでしょう。
病気を早期発見し、その人にあった治療を実現
そのほかにも、病気のシグナルを検出するスマートポリマーを合成し、病気を早期発見する技術も開発されています。患者の性別や年齢、病状などに応じて、その人に合った治療ができる医療の確立をめざすものです。この技術は、患者の負担を軽減でき、「生活の質(quality of life:QOL)」を高めることにつながります。さらには、日本が抱える大きな問題である医療費の削減にも貢献できるでしょう。医療を中心にさまざまな分野に活用できるスマートポリマーは、実用化への道が開かれつつあります。
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先生情報 / 大学情報
静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科 准教授 小土橋 陽平 先生
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