コンクリートの廃棄物は、地球温暖化を解決する手段になるか
膨大な量の廃コンクリートをどう再利用するか
私たちの住む街にある建築物の多くは、コンクリートによって造られています。それらの中からは毎年、老朽化やそのほかさまざまな理由で取り壊さなければならなくなるものが出てきます。日本で一年間に生じるコンクリートの廃棄物は、約3000万トンにも上りますが、膨大な量の廃コンクリートをどのようにすれば効率よくリサイクルできるか、そのための研究が現在活発に行われています。
廃セメントに二酸化炭素を吸着させる
コンクリートは基本的に、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)、セメントによってできています。廃コンクリートからは、砂利、砂、廃セメントがそれぞれ約30パーセントずつ生じます。これらのうち、砂利と砂については、再びコンクリートの材料として活用したり、道路のアスファルトの下に敷く材料にしたりと、リサイクル方法がある程度確立されています。一方、廃セメントについては、これまで有効なリサイクル用途が見つかっておらず、廃コンクリートの完全リサイクルにおける課題となっていました。
しかし最近では、カルシウム成分を含み、アルカリ性で、しかも微粉であるという廃セメントの特徴を生かし、大気中の二酸化炭素をこれに吸収させて炭酸カルシウムを生成させるという方法が注目されています。地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の一部を、廃コンクリートから生じる材料で固定できる可能性があるのです。
環境問題に取り組んでいくために
廃セメントに二酸化炭素を吸収させることで生成される炭酸カルシウムは、亜硫酸ガスやリン、重金属、VOC(揮発性有機化合物)などを除去する素材としての利用など、さまざまな用途が考えられます。これからの人類にとって最も重要な課題の一つである環境問題を考える上で、この廃コンクリートのリサイクルのシステムを確立することは、非常に大切な取り組みの一つなのです。
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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 山崎 章弘 先生
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