強固なだけではダメ! 地震に強い建物や橋の構造を研究する
世界一の耐震技術が……
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災は、多数の家やビル、高速道路などを倒壊させ、多くの人命を奪いました。それまで「日本の耐震技術は世界一」と自負していただけに、みな一様に大きなショックを受けました。
この悲劇を繰り返さないという決意のもと、地震が起きても倒れない、倒れにくい構造物の研究に、さらに強力に取り組むようになりました。
耐震だけではなく、免震や制震も大切
地震に強い構造物を考えたとき、まず、揺れに負けない強固さが求められます。材質をより強くし、地盤を固め、柱を多くするなどです。しかし、無限に強くできるわけではありません。そこで、地面の揺れを構造物に伝わりにくくする「免震」や、構造物の揺れを制御する「制震」という技術の研究が、行われるようになりました。
例えば、地面とビルとの間にゴムの層を敷くと、地面の揺れをゴムの層が吸収し、ビルが揺れにくくなります。橋の場合は、橋脚と橋桁の間にゴムの層を敷くことで、倒壊の危険度を減らすことが可能です。これらは免震構造の一つですが、制震技術と合わせて、日本の耐震技術は大きく進歩してきています。
「100%安全」に近づくため!
しかし、それでもなお地震に対して「100%安全」とはいえません。それは自然の力が人間の想定をはるかに超えてしまうことが少なくないからです。2011年3月の東日本大震災は、そのことを改めて思い知らされる出来事でした。
だからこそ、耐震構造の研究には、「倒れない構造物」をいかに造るかという研究とともに、残されているリスクがどのくらいあるのか、そのリスクを少しでも回避するためにはどうしたらよいのか、という視点が不可欠です。設計で考慮した荷重を越えるような外力が加わったときに、人的・経済的な被害を最小限にとどめる手法の研究などが、それに当たります。
世界有数の地震大国・日本において、耐震構造の研究は、まさに人々の命と暮らしを守る学問なのです。
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