海に浮かぶエネルギー工場、「浮体式洋上風力発電」
日本にぴったりの海に浮かぶ風力発電
風力発電は、エネルギー自給率が低い日本にとって期待される再生可能エネルギーですが、風力発電に適した平地の確保が難しく、欧米諸国ほど普及が進んでいません。それならば、広くて風をさえぎる物がない海(外洋)の上に風力発電機を設置すればいいのでは?と思うかもしれません。しかし日本沿岸は水深が深く、海底に風力タービンの基礎を組み上げる「着床式」の建設が困難な場所が多いのです。そこで注目されているのが、魚釣りの浮きのように洋上に構造物を浮かべて風車を回す「浮体式洋上風力発電」システムです。
超高層ビル級の高さの施設も
浮体式は海にポッカリ浮いているとはいえ、2MW(メガワット)の発電力のものでブレード(風車の羽根)の回転半径が40m以上、水面から上部の風車までの高さが60mを超えるという巨大な構造物です。約3500世帯に1日分の電気を供給できるとされる7MWクラスになると、なんとその高さは200mという超高層ビル級です。洋上でこれらをいかに安全にコントロールし、かつコストを抑えながら安定した発電ができるかを目標に、海洋システム工学の分野では急ピッチで研究が進められています。
洋上の電力ステーションも夢じゃない!
巨大な浮体式構造物を流されないよう海中でつなぎとめる係留システムの安全性、耐久性が重要で、数百mの水深の水圧や潮流のパワーにも対応できる係留方法とケーブルが必要になります。また、風力や風向きによってブレードの仰角や回転数をコンピュータ制御しますが、もし台風などで誤作動が起こっても、浮体が転覆しない安全対策が求められます。
研究では構造物の模型を用い、水槽に実際の風、波、流れを起こして高度なシミュレーション試験を繰り返します。浮体式洋上風力発電の実用化と応用が進めば、洋上の養殖場に電気を送ってエネルギーの自給自足を行うことや、航続時間の短い電気推進船の電力供給ステーションになることも可能です。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 海洋システム工学科 准教授 二瓶 泰範 先生
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