「橋」の長寿命化には、早期発見・早期治療のメンテナンスを!
橋はあって当たり前なのか?
身近にある川には、たいてい橋が架かっていて、自由に渡ることができます。橋を渡るときに、私たちは特に意識することもなく、空気のように当たり前にある存在だと考えています。しかし、橋を架けるためには、多くの技術と労力が費やされているのです。近年、トンネルや橋など、公共の構造物の老朽化がたびたび社会問題となっており、これによって事故が引き起こされる場合もあります。
橋を補修する方法とは
橋には、材料別に大きく分けて、コンクリート製のものと、鋼鉄など金属製(鋼製とよびます)のものがあります。どちらもメンテナンスをしなければ、長年の間に劣化することは避けられず、危険な状態となってしまいます。逆に言えば、古いから危険というわけではなく、きちんとメンテナンスさえすれば、古い橋も長持ちするということです。
鋼製の橋では、サビの発生や金属疲労が問題となります。交通渋滞の多い場所にある橋には、車の重さが繰り返しかかるため、金属疲労を起こしやすく、き裂が生じることもあります。橋の劣化を防ぎ、劣化した箇所を補修するために、今注目を集めている素材が、FRP(繊維強化プラスチック)です。接着剤でFRPを、橋脚に巻きつけたり、劣化した金属の上から貼り付けたりすることで、補強することができます。
橋を造ることから長持ちさせることを考える時代
1990年代頃まで、日本では多くの橋が造られ、いかに長く大きな橋を造るかという技術開発が注目されてきました。しかし現在では、いかに長持ちする橋を造るか、いかに今ある橋を長持ちさせるか、ということが研究の中心となってきています。橋を長持ちさせるコツは、「予防保全」です。人間の病気に対して、早期発見、早期治療が有効なのと同様で、よくない箇所を早く見つけて早く対策することが大切なのです。そのためには、橋が健全かどうかを確認するための検査技術や、検査結果に基づいた適切な診断と処置(補修・補強)が必要で、これを定期的に行って、回していくことが重要になります。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 准教授 中村 一史 先生
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