講義No.08817 材料工学

人体の仕組みを解き明かし、新たな医用材料を作ろう!

人体の仕組みを解き明かし、新たな医用材料を作ろう!

なぜ骨や歯は硬いのか?

人間の体内ではカルシウムやリン酸、カリウム、ナトリウムといったイオンが有機成分とともに自然と集積し、骨や歯といった硬い組織を作っています。それらをナノスケールのサイズで観察すると、結晶や有機分子が規則的に並んでいることがわかります。骨や歯が非常に硬いのはそのためです。一方、石鹸に代表される界面活性剤の分子も、放っておくだけで規則的に並ぶ性質を持っています。こうした現象をうまく活用することで人体にある材料を模倣して進化させ、今より高機能な医用材料が作れないかという試みが行われています。

人工物を人体に優しく密着させるには

人工骨の素材としてよく使われているのが水酸アパタイトです。水酸アパタイトは生体親和性が高い(生体に馴染みやすい)ことから、医用材料はもとより歯磨き粉などの日用品にも使われています。さらに近年、コーティング剤としての用途が注目されています。チタンは生体親和性を有する材料ですが、人体の組織との結合が弱いため、インプラント(人工歯根)が外れてしまうことがあります。そこで水酸アパタイトを薄く間に挟むことで、インプラントをより組織に密着させようというのです。同様の方法で体内に入れる微小な機器類、例えばマイクロチップのコーティングに使うこともできます。ほかにも高い生体親和性を生かして、がん細胞の標識に使うことも考えられています。

金歯が安全な理由はわかっていない

水酸アパタイトやチタンなどと比べて生体親和性が低い物質も存在します。例えば金です。そのほかプラスチックに使われているポリスチレンを体内に入れると拒絶反応が起こるため生体親和性はありません。これらの材料の間にはどんな違いがあるのか、詳細はよくわかっておらず、古くから使われてきた結果から経験的に判断されているだけです。人工的に人体の仕組みを模倣する一方で、体内に物質を入れたとき界面でどんなことが起こっているのか、そのメカニズムを科学的に解き明かす必要があるのです。

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先生情報 / 大学情報

長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 物質生物工学分野 准教授 多賀谷 基博 先生

長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 物質生物工学分野 准教授 多賀谷 基博 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

バイオマテリアル学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本人の平均寿命は80歳を超え久しいですが、健康寿命は70代前半です。つまり、多くの人が、病気を抱えながら10年程度も生きることになります。これは医療費だけでなく生活の質(QOL)の観点からも大きな問題で、そこに医療とは異なる角度から切り込んでいける材料工学が必要な状況になりつつあり、特にバイオマテリアル学はやりがいのある研究分野です。
材料工学だけではなく、何を学ぶにしても複合領域の知識が求められます。幅広い知識を吸収し、経験を重ねるために、自分の視野を広げ、柔軟な考え方を身につけてください。

先生への質問

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長岡技術科学大学に関心を持ったあなたは

長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
大学はまた、勉学の場であると同時に人間形成の場でもあります。美しい豊かな自然に恵まれた環境と、国内はもとより世界の各地から集う学生たちが豊かな人間性を養い、創造性とチャレンジ精神を求め、友情を育む潤いのある大学生活の場があります。