雪で冷房する
日本海側の降雪地域
日本で50センチ以上雪が積もる豪雪地帯は、本州から北海道の日本海側一帯に広がり、国土の約半分を占めます。世界にもニューヨーク、ボストン、ストックホルム、モスクワなど雪が降る都市はたくさんありますが、日本ほどたくさんの雪が降り積もるところはありません。これらの都市と寒さを比べると、日本の豪雪地帯の冬の気温は0℃前後と高めで、「温暖な豪雪地帯」ということになります。
日本の豪雪地帯は夏も蒸し暑い場所が多いため、冬の雪は有効なエネルギー資源になりうるのです。昭和30年代まで長岡には「雪にお」というものがありました。高さ13mにまで雪を積み上げ、苫(とま)という覆いをかけて断熱し、3500tもの雪を保存し、夏に切り出して販売していたのです。電気冷蔵庫の普及などでこの雪販売はなくなりましたが、半世紀ほど前までは雪を資源として有効活用していたのです。その後1997 年には「新エネルギー」の法律ができ、2002 年には「雪氷冷熱」および「バイオマス」がこれに加わり、再び雪エネルギーが注目されています。
利雪住宅のメリットとデメリット
雪の冷たさを暮らしに取り入れるために、「利雪住宅」が建てられました。豪雪新潟では、家を守るために屋根から降ろした雪のやり場に困ることがありました。そこで「雪を捨てる」のでなく「貯める」と発想を転換し、建物の中に30トンの雪が入る雪室(雪の倉庫)を作り込み、これを夏の冷房に使うシステムを導入しました。部屋の空気を雪室に送り込んで冷やし、再び部屋に戻すだけの冷房です。雪が塵、埃、たばこの煙などを吸着し、さらに湿気は雪の上で結露するので除湿もされます。雪室の隣には天然保湿冷蔵庫があり、野菜やお米やお酒を長期間鮮度よく保存できます。30トンの雪で24畳分の部屋を一夏冷やして、電気代はわずか1000円程度。雪を雪室に詰める作業が必要というデメリットはありますが、それを上回るメリットが証明されました。これから本格的に普及することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 機械工学分野 教授 上村 靖司 先生
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