転倒・骨折を防ぐ運動や生活を考える「科学的看護」とは?
健康寿命を阻む、「転倒・骨折」問題とは
日本には支援を必要とする「要介護」状態の高齢者がいます。その要因の約3割が運動機能の低下によるもので、きっかけになるのが「転倒・骨折」です。加齢によって骨密度が低くなる骨粗しょう症になると、転倒で骨折しやすくなり、さらに動けない生活で筋肉量が減り、要介護状態や寝たきりになります。健康の不安なく人生を楽しむ「健康寿命」を延ばすためには、「転倒・骨折」をいかに防ぐかが大切なのです。
簡単な運動でも、運動機能の維持に効果
「転倒・骨折」を予防するために大切なものの一つが、転倒しないよう身体機能を維持する運動リハビリテーションです。運動をすれば骨密度の低下を防げることがわかっています。そこで整形外科に通院する高齢者に1年間、運動に取り組んでもらった事例があります。その運動とは、何かにつかまって片足で立つ、足先でタオルをつかむ、手を伸ばすなど、自宅でできる簡単なものです。途中で、本人が歩行する動画を見せたり、面談を定期的にしたりと、やる気が続くようにフィードバックも行われました。すると1年後、体力測定値に変化はなかったものの、できなかった「片足立ち」ができるようになるなど、動作機能の改善が見られたのです。たとえ低負荷の運動でも、継続することで運動機能の向上や維持に役立つことがわかりました。
転倒・骨折しやすいパターンを予測?
次に大切なものは、どのような動作や生活が運動機能の維持に関連があるかを知ることです。そこで被験者にスマートウォッチのようなセンサ装置をつけて、身体活動量・睡眠・室内環境などのデータを収集分析し、同時に看護師が日常生活や動作パターンの聞き取りと観察をして、その関連性を探究する研究が始まりました。将来的には、転倒骨折しやすい人やその生活パターンを予測できるようになるはずです。このようなデータサイエンスやセンサ技術などの工学と看護学が連携して、「転倒・骨折予防システム」を構築する研究が進んでいます。
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