古くて新しい素材、天然ゴムの有効活用

古くて新しい素材、天然ゴムの有効活用

天然ゴムの新たな使いみち

天然ゴムを使用した商品は身の回りに数多くあります。最近では、天然ゴムからバイオマスエネルギーとして、ディーゼルエンジン用液体燃料を合成することも可能になってきました。また、ゴムを採取しているゴムの木からは「リグニン」や「セルロース」といった物質が取れます。これを分解して採取した「モノマー」をゴムと反応させてプラスチックに似た性質の素材を作ることができるようになってきました。合成ゴムとしてSBR(スチレン・ブタジエンゴム)というゴムが乗用車用のタイヤとしてよく利用されています。天然ゴムはSBRより硬くて、弾性率が高く、燃費のいいタイヤになるのですが、ぬれた路面でブレーキをかけたときには滑ってブレーキが効きにくいため、大型トラックや、飛行機など重い車両用のタイヤとして使用されています。

世界の天然ゴムの9割はアジア産

天然ゴムのメリットを生かすためには、天然ゴムを安定的に、安価に採取できるようにしなければなりません。天然ゴムの90%はアジアで生産されています。タイ37%、インドネシア23%、マレーシア13%といったところです。天然ゴムは、ゴムの木の中で酵素と呼ばれるタンパク質の働きによってできます。ただ、採取した直後の状態では不純物が含まれているので、不純物を取り除いて精製するという工程が不可欠です。従来の精製技術では、タンパク質分解酵素を利用し、タンクの中に入れて40℃で、72時間も処理しなければなりませんでした。これに対して、現在では尿素を用いた精製法が開発されて、室温で2~3分で処理できるようになりました。しかも、タンパク質分解酵素が非常に高価だったのに対し、尿素はとても安価なうえ、従来の精製プラントに尿素を混ぜる仕組みと、遠心分離する仕組みを追加するだけなので、大幅なコストダウンをはかることができるのです。

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長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 物質生物工学分野 教授 河原 成元 先生

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メッセージ

研究とは自然の摂理を探求することです。自然の摂理を究明しようとする側である研究者が色めがねを外し、純真無垢な心を持つことができたとき、自然はその神秘的な姿の中から研究者の心に相応する一部をあらわにしてくれます。その一部は唯一の物であり、唯一の物であるからこそ、それを物作りに応用するとき、新規材料が開発できるのです。

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長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
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