人間の専門家よりも優れた解を作り出す(こともある)進化計算とは?
無限に存在する組み合わせの中から
学校の部活動で何かの競技に取り組んでいるとします。体力を向上させるトレーニングから、基本的な技術の練習、団体競技ではコンビネーションやフォーメーションの練習など、さまざまな練習メニューがあります。試合に勝つために、限られた時間のなかで、どの練習にどれくらいの時間を費やすか、その組み合わせは無限に存在します。
そんな問題に対して、最適な解を導き出すのが「進化計算」という手法で、人工知能技術の一分野として研究が進められています。
生物の進化を模倣する計算法
あらゆる生物は、長い年月をかけて、環境により適した形質を残す進化を続けてきました。同様に進化計算も、何らかの課題に対するさまざまな解決法の案を仮想的な生物とみなし、「よりよい解決法」が生まれてくるように進化を行わせます。
生物の場合、よい特性を持つ個体と、それとは異なるよい特性の個体とを交配した結果、両方のよい特性を兼ね備えた子どもが誕生することがあります。進化計算でも、そうした偶然性に期待して、たくさんの個体が幾世代にも渡って子孫を残す過程を模倣します。コンピュータ上でこのような計算を行う方法は「遺伝的アルゴリズム」と呼ばれます。解決策を「進化」させるのです。
進化計算によってデザインされた新幹線
カモノハシの顔のようなデザインの新幹線の車両「700系」の先頭車両の斬新な形状も、進化計算によって設計されました。先頭車両を尖(とが)らせる方が、空気抵抗が減ってスピードを上げられますが、その分、スペースが狭まって乗車定員が減ります。また、カーブ時の安定性を高めるには、ある程度の横幅が必要ですが、車体の投影面積(正面から見た広さ)が大きくなると、トンネル突入時に生じる空気の圧縮波が大きくなり、騒音の発生や乗り心地の低下につながります。このような、「あちらを立てればこちらが立たず」の関係にある複雑な問題に対して、遺伝的アルゴリズムによる進化計算を適用すれば、最適解を求めることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 工学部 先進工学科 情報・生体工学プログラム 教授 小野 智司 先生
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