水辺のごみを失くすには?

水辺のごみを失くすには?

「わからない」という大きな問題

全国で、海沿い・川沿いにごみが集積し、大きな問題となっています。この問題の難点は、どこからごみがやってくるのか(汚染源)、どうやって集まるのか、そしてごみそのものの量がわかっていないことにあります。そこでまずは現状把握と、効果的かつ効率的な対策を考えるために、ごみの「観測技術」を確立するための研究が進められています。ここではスマートフォンのアプリや各種カメラなどのリモートセンシングによって観測されたデータをAIで解析して、どこにどのくらい、どのようなごみがあるのかを明確化しようとしています。

ごみを減らす第一歩

水辺に集まるごみによる汚染状況を定量化する画像解析AIのWebサービスはすでに開発されており、画像から「ごみか否か」をAIで簡単に判断できるようになりました。この技術は研究者など専門家でなくとも簡単に利用可能で、多くの人の活用により汚染源の特定に近づくと考えられます。そしてそれが、環境対策立案の判断材料の一つになるとも期待されています。立案された対策が現実に行われる際には、法律の改定、施策の実施というプロセスを踏みます。そのとき求められるのが、明確な科学的根拠であり、その構築がなされている真っ最中なのです。
このように技術面での探究を行うと同時に、人の環境意識に響く情報発信も大切です。汚染された海や川が近くにない場所に居住する人には、水辺のごみのひどさがわからない場合があります。そのような層に向けて発信を行い、全体的な環境リテラシーを向上させることが必要なのです。

ごみを失くすことにとどまらない

現在行われている研究から水辺のごみを失くす方法が判明すれば、生態系だけでなく、企業によるごみの扱いなどにも大きな影響を与えると予測されます。加えて、ごみの排出や処理に関わる新しい産業が生まれる可能性もあるでしょう。これら技術で環境保全を進めていくためにも、まず今ある「わからないこと」を明確化する研究は、非常に重要だと言えます。

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鹿児島大学 工学部 先進工学科 海洋土木工学プログラム 教授 加古 真一郎 先生

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メッセージ

考えることをやめないでください。受け身でいるのではなく、目についたこと、関心を持ったことについて考え、自ら学ぶ、深掘りする姿勢を保ちましょう。自分や社会にとって何が問題で、解決のために何をすべきなのか、常に自分の頭で考え続けられる人であってほしいです。それが身につけば、大学生活はより充実して、大学での研究も進んでいくでしょう。誰かに指示されたからと、意味がわからないまま実践するようなやり方は捨てて、あなたなりの関心分野で何かを生み出せる人になってほしいです。

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鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。