AIは脅威か? 新技術を正しく知り、社会との「いい関係」をつくる

AIは脅威か? 新技術を正しく知り、社会との「いい関係」をつくる

生成AIの普及

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの精度が飛躍的に向上し、誰もが簡単に利用できるサービスも普及してきました。主題や構成などを指定すれば、長文もわずかな時間で仕上げるため、「ついに機械が知性や感情を持った」「生成AIは自ら考えることができ、しかも頭が良い」と感じる人も少なくありません。教育現場でも対策が急がれており、193の大学・学部を対象とした調査では、約1割が学生に生成AIを使用することを全面的に禁じていました。また、論文の全文を生成AIに書かせたり生成AIが作成した文章をそのまま使うことを禁じている大学・学部が非常に多いことがわかりました。

「もっともらしい」作文をする機械

一般的にAIは「計算機(コンピュータ)」「アルゴリズム」「データ」で構成されています。パワーといえる計算機、頭脳といえるアルゴリズムがいくら良くても、データ=何を学習させるかによって、回答内容や精度は大きく左右されます。また、その仕組みは「予測変換」のイメージに近く、例えば「犬も歩けば」の後には「棒に当たる」と答えるような、与えられた問いに対してできるだけ「もっともらしい」作文をしているにすぎません。質問者の意図を深く考えたり、あえてユニークな回答を示したりすることはないのです。

新技術と正しく付き合う

AIは今後も急速に発展し、将来は人間の知性をあらゆる面で上回るという見方もありますが、その仕組みを正しく知れば、そうした事態はまだまだ起こらないことがわかります。大学のレポート作成においても、現状ではそのまま使えるレベルではありませんので、上手く使ってやることが必要です。歴史を振り返れば、私たちはこれまでもワープロソフトやインターネット、翻訳や文章校正といった新技術を受け入れその都度ルールを見直してきました。AIに対しても同様に、過度に恐れず、過小評価することもなく、機能を正しく見極めて、社会に浸透する過程でどんな問題が起き、その問題とどうつきあっていくかを考える姿勢が重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 教授 庄司 昌彦 先生

武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 教授 庄司 昌彦 先生

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情報社会学、情報通信政策学

先生が目指すSDGs

メッセージ

過去を理解し、現状を分析することはとても大切です。しかし、これまでの常識だけでは通用しないような新しい現象も日々起こり続けています。例えば、現在さまざまな議論を呼んでいる生成AIの社会実装もそうした問題のひとつでしょう。変化の大きい情報社会で「受け身」にならず、主体的に学び考えるのが本学のメディア社会学科の特徴です。社会学の背景を持ちつつ自らの頭で考え、深く理解する力を養い、新しい技術を取り入れながら多様な人々との協働によって社会を良い方向に変えていく方法を、私たちとともに考えていきましょう。

先生への質問

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武蔵大学の特長は、充実したゼミ教育にあります。平均13名の少人数で開講されるゼミは、約400種類。1年次からゼミや少人数形式の授業がスタートします。グローバル教育にも注力しており、参加体験型学習スペースMCV(Musashi CommunicationVillage)をはじめ、外国語学習やグローバル体験ができる環境を整備しています。
また、国際教養学部 経済経営学専攻では、本学の学位と並行して、ロンドン大学の学士号取得をめざす「パラレル・ディグリー・プログラム(PDP)」を設置しています。