講義No.03418 数学 物理学

不思議な振る舞い カオスって何?

不思議な振る舞い カオスって何?

予測できない不思議な動き

「カオス」とは何でしょうか? 一般に「無秩序」などの意味で知っている人も多いでしょう。このカオス、物理の世界では「簡単な規則から生じるにもかかわらず、非周期的で予測不可能な性質をもつ運動もしくは変動」のことです。つまり、一定の繰り返しではなく毎回違う動きをする上に、小さな違いも大きな違いになる、そのためこれからどうなるか予測ができない変動、それがカオスなのです。

ある一線を越えるとカオスになる

実は、カオスはいろいろなところに顔を出します。身近な例をひとつ紹介しましょう。それはお湯を沸かす時の水の流れです。水を下から温めると「対流」という現象が見えます。上下の温度差がある程度あると、温まった水は上に昇り、冷され、下に降り、また温まり……と規則的運動を見せます。これが「対流」です。ところが、温度差が大きくなると流れが“不規則”になる、つまり対流が乱れてカオスになるのです。流れが止まったり動き出したり、逆回りしたりといった現象が起きます。このようにカオスは規則的変動のそばにあります。なんとあなたの神経や脳の活動にも、規則的変動とカオスの両方が観られます。

カオス研究はこれから

科学の世界でのカオスは比較的新しい学問で、精力的研究は30年ほどの歴史しかありません。それは、カオスがコンピュータの進歩とともに生まれてきた学問だからです。カオスの不思議な運動は、難しい関数を使っても決して表現できません。そのため、コンピュータの発達以前は認識すらされていなかったのです。
まだ基礎研究の段階というものの、今後の展開にはさまざまな可能性が考えられます。まずカオスの研究が進むことで、自然現象の理解が新しい方向へ拡がります。水の「対流」を紹介しましたが、地球大気の運動もよく似ています。大気の運動の中にもカオスがあり、それが解明できれば大気のことがもっとよくわかるはずなのです。人間は、天気をコントロールすることも、ピタリと当てることもできませんが、天気の新しい見方を育んでいます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 理学部 物理科学科 准教授 秦 浩起 先生

鹿児島大学 理学部 物理科学科 准教授 秦 浩起 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

物理学、非線形科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私たちの身の回りをよく観てみると、たくさんの不思議な現象に出会います。水の流れに棒を立てると、後ろに渦ができて流れが規則的に揺れます。ある日、この現象と笛の音は関係するのだろうか?と考えます。観て考える、考えて観る……それが科学でしょう。
鹿児島大学は世界有数の火山、桜島の目の前にあります。僕は、初めてその爆発音(衝撃波)にあったとき、びっくりして研究室を飛び出し学生に笑われました。ここは大きな自然を観つつ、科学を学ぶことのできる素敵な場所です。

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。