不思議な振る舞い カオスって何?
予測できない不思議な動き
「カオス」とは何でしょうか? 一般に「無秩序」などの意味で知っている人も多いでしょう。このカオス、物理の世界では「簡単な規則から生じるにもかかわらず、非周期的で予測不可能な性質をもつ運動もしくは変動」のことです。つまり、一定の繰り返しではなく毎回違う動きをする上に、小さな違いも大きな違いになる、そのためこれからどうなるか予測ができない変動、それがカオスなのです。
ある一線を越えるとカオスになる
実は、カオスはいろいろなところに顔を出します。身近な例をひとつ紹介しましょう。それはお湯を沸かす時の水の流れです。水を下から温めると「対流」という現象が見えます。上下の温度差がある程度あると、温まった水は上に昇り、冷され、下に降り、また温まり……と規則的運動を見せます。これが「対流」です。ところが、温度差が大きくなると流れが“不規則”になる、つまり対流が乱れてカオスになるのです。流れが止まったり動き出したり、逆回りしたりといった現象が起きます。このようにカオスは規則的変動のそばにあります。なんとあなたの神経や脳の活動にも、規則的変動とカオスの両方が観られます。
カオス研究はこれから
科学の世界でのカオスは比較的新しい学問で、精力的研究は30年ほどの歴史しかありません。それは、カオスがコンピュータの進歩とともに生まれてきた学問だからです。カオスの不思議な運動は、難しい関数を使っても決して表現できません。そのため、コンピュータの発達以前は認識すらされていなかったのです。
まだ基礎研究の段階というものの、今後の展開にはさまざまな可能性が考えられます。まずカオスの研究が進むことで、自然現象の理解が新しい方向へ拡がります。水の「対流」を紹介しましたが、地球大気の運動もよく似ています。大気の運動の中にもカオスがあり、それが解明できれば大気のことがもっとよくわかるはずなのです。人間は、天気をコントロールすることも、ピタリと当てることもできませんが、天気の新しい見方を育んでいます。
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