米粉パンを小麦粉パンと同じようにふっくらさせるには

米粉パンを小麦粉パンと同じようにふっくらさせるには

小麦アレルギーの人でもパンを食べられる?

小麦粉のパンには、アレルギーの原因であるグルテンが含まれています。一方、米粉を使えばアレルギーは起こりませんが、グルテンがないためパン特有の膨らみがでません。そこでパンをふっくらさせるために、米粉パンには増粘剤が使用されています。増粘剤を使うとふっくらしますが、独特の臭いがします。また、添加物を嫌う人もいます。

米粉パンをふっくらさせる方法

小麦粉パンが膨らむのは、発酵で生じる炭酸ガスがグルテンの網目の中に入り込み、生地に保持されるからです。しかし、製粉を工夫すると、グルテンや増粘剤がなくても米粉だけで膨らむことがわかってきました。米粉は5マイクロメートル程度のデンプンの粒子でできていますが、それが発酵でできる炭酸ガスの周りに吸着することで、気泡を保持できるのです。
吸着の秘密は「表面張力」にあります。二つの物体、今の場合「ガス」と「液状の生地」の境界を界面といいます。界面近くの分子は、両側の物体の中の分子とは異なる振る舞いをします。そのために、界面には余計なエネルギーがありますが、自然界はエネルギーの低い状態を好みます。表面張力は、余計なエネルギーを持つ界面を少なくしようとして、表面積を縮める力です。界面活性分子が液中にあると、それらが界面吸着してエネルギーを下げ、表面積を縮めなくてもすみます。デンプンの小さな粒子が界面活性剤のように炭酸ガスの周りに吸着することで、気泡を安定にするのです。

界面の特殊な性質の利用

製粉時の摩擦熱で米粉はダメージを受け、デンプンの成分であるグルコースに分解されやすくなります。そうなった米粉は炭酸ガスの周りに吸着し難くなります。しかし、適切な製粉で米粉パンを作ると、小麦粉パンと同じ程度に膨らませることができるのです。
界面の特殊な性質を生かした製品は、ほかにも身近なところにあります。洗剤やマヨネーズ、自動車の排ガス浄化用触媒もそうです。また、今後発展する電気自動車のバッテリーや水素貯蔵にも関わっています。

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広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 ヴィレヌーヴ 真澄美 先生

広島大学 総合科学部 国際共創学科 准教授 ヴィレヌーヴ 真澄美 先生

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コロイド・界面化学、物理化学

メッセージ

私の専門は、コロイド・界面化学です。高校生の時に「ミセル」について教わり、分子が比較的弱い引力で集まってできる物体に興味を持ちました。ミセルとは、分子内に水となじみやすい親水性の部分と油となじみやすい親油性の部分とを併せ持つ界面活性剤分子が、十~数百個集まったものです。化粧品や自動車の排ガス浄化用触媒など、生活のいろいろな所にその原理が応用されています。
この研究は複数の分野をまたぐものですが、その学際的なところに面白いことがたくさんあります。大学ではいろいろなことに興味を持って勉強してください。

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