人間の営みをデータで理解する

データサイエンス×社会学
近年の社会学では、現場でのフィールドワークや歴史資料の分析、理論研究のほかに、「データサイエンス」を用いた研究も活発です。統計データやアンケート調査などを分析して、社会現象の傾向やパターンを明らかにしていくのです。
「日本の教育機会の不平等」というテーマでは、生まれた家庭の階層状況が、子どもの大学進学率に影響を与えるという現実がデータによって実証され、その背景が考察されました。例えば経済的な余裕のない家庭では、子どもの教育にかけられる費用が少ないため、教育を受ける機会が限られることが、子どもの進路に影響すると考えられています。
データを用いた格差問題へのアプローチ
こうした子ども自身が選択できない「環境からくる不平等」は是正されるべきですが、では教育格差をどう縮めるかという課題解決は簡単ではありません。全員が大学に進学する制度を作れば格差自体が無くなりますが、多くの企業は「高卒」や「大卒」といった基準で人材を採用しており、そのシステムの根本的な見直しも必要になります。また、高収入の家庭の子どもの大学進学を抑制することでも格差は縮まりますが、これも現実的ではありません。最も実現可能性が高そうなのは、収入が低い家庭の子どもの大学進学率を上げることですが、そのためには高等教育の役割の見直しや経済的支援の検討といった、学問分野の垣根を越えた議論と合意形成が不可欠です。
社会学研究に通底するもの
20世紀初頭、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは、「ビジネスの成功者はカトリックよりもプロテスタントの方が多い」というファクトに注目して、その背景を考察しました。そして当時の常識では相反するとみなされていた「信仰」と「ビジネス」が結びつき、資本主義の発展につながっていると示したのです。現代のデータを用いた社会学においても、そのプロセスと根底にある研究者の関心は同じです。「人間の営みを深く理解したい」というシンプルな欲求こそが、社会学研究の原点と言えるでしょう。
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