工学部で米粉パン? 工学の知識で食の可能性を広げよう!

工学部で米粉パン? 工学の知識で食の可能性を広げよう!

小麦粉を米粉で置き換える

最近、小麦粉でなく米粉からできた、いわゆる「米粉パン」をよく見かけるようになりました。小麦はアレルギーの原因となるグルテンを含んでいるので、グルテンを含まないパンへのニーズがあるのです。
ただし、グルテンは粘りやコシの元になるタンパク成分であり、焼いた時にふっくらとさせる役割があります。従って、単に小麦粉を米粉に置き換えるだけでは、パンは膨らまないのです。

常識にとらわれず挑戦する

かつては、「米からパンを作るのは無理」というのが食品業界における常識でした。しかし、材料工学的に考えると、小麦粉や米粉の主成分であるデンプンはプラスチックと同じ高分子です。パンの断面を見ると、細かい気泡が無数にあることが分かりますが、これは発泡スチロールと同様の構造であることを示しています。つまり、プラスチックの成形技術と同じように、パン生地の粘度(粘り気)を制御できれば米からでもパン作りは可能だと考えられます。
米に粘り気を持たせるには、「炊飯」という手段があります。災害時の非常食としても知られる「アルファ化米」は、炊いた米を乾燥させた状態のもので、水を注ぐだけでご飯やおかゆになります。米粉にアルファ化米粉を混ぜればパンを作ることは可能ですが、アルファ化米を作るには炊飯という工程を経るためにコストがかかり、高価になってしまいます。

米粉が身近になる未来

炊飯は、米に水と熱を同時に与えることによって、デンプンの分子構造をゆるませる工程です。この現象を「アルファ化」といいます。普通アルファ化は炊飯をしないと起こらない現象ですが、加熱しながら米粒を粉砕することで一瞬にしてアルファ化米粉が作れることが分かりました。
アルファ化米粉は煮炊きなどをしなくても食べられますので、非常食や介護食などにも応用できます。現在はこの技術を普及させるために、基礎研究と同時に用途展開に関する研究も行われています。このように、工学の知見を活かすことで、異分野の技術開発に貢献することもできるのです。

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山形大学 工学部 高分子・有機材料工学科 教授 西岡 昭博 先生

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材料工学

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メッセージ

大学での勉強はおもしろい!! これは私が大学生になった時に感じた率直な感想でした。私が高校生の時は、高校で習う数学や物理、化学などの勉強が将来何に役立つのかがわからずに過ごしていました。大学に入学してその意味が明確になったことを今でも鮮明に覚えています。特に工学部での研究は、成果の「見える化」に一番近い分野ですから、勉強や研究の目的が明確です。高校時代に習得する基礎学力はきっとあなたの夢を実現するツールになってくれます。今しかできないことをぜひ頑張ってください。

先生への質問

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山形大学は、東日本有数の総合大学であり、4つのキャンパスはネットワークで融合されています。社会のリーダーにふさわしい基本能力と幅広い教養を身につけるため、教養教育に力を入れています。大学運営の基本方針として、一つは、何よりも学生を大切にして、学生が主役となる大学創りをするということ、そしてもう一つは、教育、特に教養教育を充実させるという2点を掲げています。