遺伝子組み換えで「お米」が感染症のワクチンに!
さまざまな用途に応用できる米のタンパク質
「米」は私たちにとって、なくてはならない身近なものです。その米ですが、実は使い道は主食として食べるだけではありません。米に含まれる「タンパク質」をバイオテクノロジーの技術で遺伝子組換えをすることで、さまざまな用途に活用できます。
新しい活用方法の一つとして注目されているのが、コレラなどの感染症に対する、口から服用する経口ワクチンです。イネには「タンパク質を大量に合成して特定部位にため込む」という性質があります。この性質を利用して、ワクチン成分をつくる遺伝子をイネに組み込み、収穫した米を砕いて粉末状の経口ワクチンとして活用します。
米を使ったワクチン
米を経口ワクチンとして活用するメリットは、ワクチンを常温で保存できることです。また注射器や注射針を使わなくてもいいので、医療用廃棄物が出ることもありません。さらに米の中にワクチン抗原をため込んだ「PB-I(プロテインボディI)」というタンパク質顆粒は、食道や胃で分解されにくく腸までダイレクトに届くので、ワクチンの効果が発揮されやすいというメリットもあります。ただし米は生で食べるとおなかを壊しやすいという特徴があるため、できるだけ少ない量の米にワクチンの成分を凝縮することが今後の課題となっています。
酒米・パン・化粧品などへの活用
ワクチンの開発以外にも、米に含まれるタンパク質の研究はさまざまなものや分野への応用が可能です。その一つが新しい酒米の開発です。酒造用原料米に含まれるタンパク質の量を減らすことで、雑味を抑えた品質のいい日本酒をつくることができます。また米粉を使ったパンづくりへの応用も期待されています。具体的には米に含まれる「グルテリン」というタンパク質の量や成分を調整することで、グルテンを加えることなく米粉パンを膨らませようとする取り組みがあります。ほかにも、米のタンパク質が持つ性質を化粧品や米油などさまざまな製品に活用する試みが進められています。
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京都府立大学 生命環境学部 農学生命科学科 教授 増村 威宏 先生
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