縁の下の力持ち「触媒」

縁の下の力持ち
酸性雨とは非常に酸性の強い、硝酸や硫酸を含んだ雨です。この雨は、植物を痛めつけます。
植物の生えている土のpHが4以下、つまり強い酸性になってしまうと、植物の生息は阻害されます。そして植物が減少するにつれて地球温暖化も加速し、地球環境が悪化してしまいます。
この酸性雨は、車の排気ガスに含まれる一酸化窒素が大気中で硝酸となることで発生します。そして一酸化窒素は、車のエンジン内で燃料(ガソリン、軽油など)が高温で燃焼することで生じます。燃費を良くするため、空気を多くし燃焼効率を上げると一酸化窒素の排出量は増えてしまいます。逆に燃焼効率を下げると、一酸化窒素の排出量は減少しますが、今度は不完全燃焼による「すす」が生じてしまいます。したがって燃料を効率よく燃やしても、一酸化窒素を排出しないようにできれば問題が解決します。そして、これを実現するのが触媒なのです。
触媒とは、化学反応をつかさどる「縁の下の力持ち」だと言えます。例えば車の排気ガスを触媒に通すと、排気ガス中の化学成分が触媒の働きによって化学反応して、一酸化窒素をほかの無害な物質に変化させます。つまり燃料を燃焼しても一酸化窒素が発生せず、酸性雨が減少するのです。
よりクリーンに
そして触媒の働きは、温暖化防止だけにとどまりません。触媒は新エネルギーである水素を、クリーンに作り出すこともできるのです。水素を作る際、メタンと水を原料に作る方法があります。しかしその方法では、二酸化炭素が生じてしまいます。したがって二酸化炭素が生じないように、水素を作り出す方法が求められます。
その方法とは、触媒の働きによってメタンを直接、水素と炭素に分離する方法です。この方法だと水素のほか、ナノカーボンという未来の新素材も得ることが出来ます。エネルギーのニューヒーローとして注目される水素の誕生には、触媒という縁の下の力持ちの存在が必要不可欠なのです。
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