グルテンフリーの米粉パンをふっくらと膨らませる!

グルテンフリーの米粉パンをふっくらと膨らませる!

「グルテンフリー」の必要性

グルテンというタンパク質を含む食品の摂取を避ける「グルテンフリー」というライフスタイルが欧米を中心に広がりを見せています。これは、グルテンによって引き起こされる「セリアック病」や小麦アレルギーを持つ人の増加が影響しています。国内でも、小麦アレルギーは3番目に多い食物アレルギーです。小麦を完全に避けるとなると、うどんやそうめん、パンをはじめ、味噌や醤油などの調味料も食事の選択肢から外れてしまいます。そのため、グルテンを含まない米粉を使った代替食品の開発が進んでいて、特に小麦パンと同様のふっくらとした食感を持つグルテンを含まない「米粉パン」の開発に注目が集まっています。

米のタンパク質分解が米粉パンをふっくらとする?

小麦パンはグルテンが持つ網目構造の内部に発酵ガスを閉じ込めることによって膨らみます。米粉パンでこの膨らみを出すには、グルテンに頼らない方法で発酵ガスを閉じ込める工夫が必要です。色々な食品成分を加えて米粉パンを焼いてみたところ、タンパク質を分解する酵素を含むパイナップルやキウイの果汁が米粉パンを大きく膨らませることがわかりました。

タンパク質分解酵素で柔らかさと持続性もアップ!

米のタンパク質を分解すれば米粉パンが膨らむ事がわかったので、市販の様々なタンパク質分解酵素を入れて米粉パンを焼いてみました。様々なタンパク質分解酵素が米粉パンを膨らませることがわかりましたが、すぐに固くならず、焼き上がりから数日間その柔らかさを保てる事もわかりました。焼いた米粉パンを電子顕微鏡で観察すると、膨らんだパンに細かい気泡が分散していました。また、パン生地もタンパク質が網目状に分散していることがわかりました。しかし、タンパク質分解酵素が米のタンパク質にどのように作用しているのかまだ詳しいことはわかっていません。この作用を解明することで、そのほかのグルテンフリー製品にも活用の幅が広がるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

石川県立大学 生物資源環境学部 食品科学科 教授 本多 裕司 先生

石川県立大学 生物資源環境学部 食品科学科 教授 本多 裕司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農学、家政学、食品化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

食品の分野に興味を持つのは、私のように食べることが好きな人だと思います。身近な食品には様々な化学反応がみられます。例えば、お肉を焼くと良い香りがしてきますし、ご飯をよくかんで食べると甘くなってきます。これらの変化は化学反応によっておこっていますので、これらを理解するには「化学」の知識が必要になってきます。大学では、物理化学、有機化学、生物化学など様々な「化学」を学びます。それらの「化学」の知識を学んでいけば、先に示した食品の変化が良く理解できると思います。ぜひ、「化学」を好きになってください。

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人間の暮らしの根幹を支えている農業生産。その基盤となる自然環境。そして食べるということ。そうした人と自然との関わりをしっかりと見つめ、未来へ生かしていこうとすること。そんな思いを実現するために、本学では少人数制での指導体制(卒業研究指導時、教員1人に対し学生3人以下)を取っています。結果、就職率100%、官公庁就職率25%(2020年3月卒業生)という実績を上げており、地域社会のニーズに応えられるよう努めています。「住みよさランキング2020」全国1位の「ののいち」で私たちと一緒に学びませんか。