環境に優しいバイオエタノールとバイオプラスチックの普及のために

環境に優しいバイオエタノールとバイオプラスチックの普及のために

バイオマスエネルギーとバイオマス素材

エネルギー源としての石油は、燃やしてしまうと二酸化炭素と水になり、元の石油には戻りません。プラスチックもまた、原料の石油に戻せないのは同じです。石油などの化石資源は埋蔵量が限られているので、生物由来のバイオエタノールやバイオマスプラスチックを使う動きが世界で始まっています。ブラジルでは多くの車がガソリンの代わりにエタノールで走っています。ガソリンスタンドでは、バイオエタノールがガソリンに並んで販売されています。日本でも「植物生まれのプラスチック」を使った日用品を目にする機会もふえてきました。植物はもともと二酸化炭素と水なのでエタノールやプラスチックを燃やしても元に戻るだけで、環境に負荷をかけません。

バイオマス技術の課題

ただし、バイオエタノールやバイオプラスチックにはいくつかの課題があります。まず、現状では原料が食糧だということです。食糧危機が叫ばれる中で、食糧をエネルギーや素材にしていいのかという疑問がわくのも当然です。砂糖やでんぷんでなく、同じ炭素として草や木、野菜のカスなどを使う研究もされています。技術的には不可能ではありませんが、現状ではとてもコストとエネルギーがかかってしまいます。これでは環境に優しくありません。現在使い道のないバイオマスから、エネルギーやコストをかけずに燃料や材料を生産する技術の開発が大きな課題のひとつです。

バイオマスエネルギー/素材の普及に必要なのは

再生可能な植物由来のバイオマスエネルギーやバイオマス素材の普及には、社会的な条件整備が必要です。環境技術は科学であると同時に社会技術なので、社会的合意がないと進みません。その際重要なのは、環境に対する影響をどう評価するかです。悪影響を及ぼすものには、環境を守るために必要なお金を税金として課し、いい影響を与えるものには援助するなど区別していくことが、環境をトータルで考えたときに重要になります。

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先生情報 / 大学情報

東京大学 生産技術研究所  教授 吉江 尚子 先生

東京大学 生産技術研究所 教授 吉江 尚子 先生

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高分子化学

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メッセージ

好きなことを見つけたら、それをとことん突き詰めてみましょう。疑問がわいたらできるだけ解くようにしましょう。それは学校の勉強につながっていないことでも同じです。このようにして、好奇心を進路につなげることができるといいですね。もう一つ、今の社会にすぐに役に立つ技術に興味がある人は、男子も女子もぜひ工学部に進んでください。あなたが想像しているよりもずっと幅広い分野で活躍できる、社会人としてのバックボーンが身につくはずです。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。