「ナノテクノロジー」が切りひらく医療分野の未来
1滴の血液から多くの情報を獲得
「ナノテクノロジー」とは、10⁻⁹メートルという非常に小さな単位「ナノ」の領域での技術のことを言います。この技術は、医療分野でも活用されており、さまざまな研究が行われています。中でも診断技術に用いることは、患者の検査の負担を軽減することにもつながります。例えば、健康診断の場合、自分で医療機関まで出かけ、その場で採血などの検査を受けます。しかし、足の不自由な高齢者などは外出がしづらく、子どもなら痛い注射での採血をいやがることもあります。ナノレベルで見ると、わずか1滴の血液からでも多くの情報が獲得できるので、これまでのような多量の採血は必要ありません。自宅用の「診断キット」を活用すれば、医療機関に出かける手間を省くことができます。
病気の早期発見や予防にも
血液のほか、涙、汗、唾液、体臭からも病気の診断は可能です。これらをナノレベルで検査することで、がんや生活習慣病などを早期に発見・予防できるほか、診断が困難だった病気も見つけやすくなる可能性があります。さらに、検査結果を電子機器を介して、自宅と病院で共有すれば、医師とEメールでやりとりをしたり、緊急時はすぐに救急車を手配してもらったりできます。最近は、先進国で増加している生活習慣病について、早めにリスクを察知し、病気の予防につなげようという研究も盛んに行われています。
ナノテクノロジーを、さらに私たちの身近に
将来、ナノテクノロジーは私たちの日常生活においても、もっと身近な存在になると予測されます。例えば、自分の皮脂の成分から、「親父臭」などと呼ばれる加齢臭がチェックできれば、外出時の身だしなみにも役立ちます。また、体調によって色が変化するようなコンタクトレンズが開発されれば、毎日の健康管理に生かすことができます。現在、日本のナノテクノロジーの研究は、世界でもトップレベルにあり、国家規模で精力的に推進されている分野なのです。
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大阪公立大学 工学部 応用化学科 准教授 遠藤 達郎 先生
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